現在高齢者から働き盛りの若者にまで発生している「孤独死」。「身内が孤独死してしまった」「私が管理しているマンションの一室で孤独死が起きた」というご依頼から、当社で特殊清掃の作業をさせていただくケースは多くあります。そしてその現場は男性の孤独死であることが多いです。
下記のデータは第7回孤独死現状レポートから引用したものです。このデータを見てみると男性の孤独死人数の割合が83.2%というデータが出ていることが分かります。
さらに男女別死亡年齢の構成比の方では60~69歳までが30.9%、70~79歳までが21%という数値が出ていることが分かります。つまり男性かつ高齢者である人が孤独死が起きやすいのです。
対して女性の孤独死人数の割合は16.8%と大きく男性と差が開いています。男性の方がご依頼が多いなと感じてはいましたが、まさかここまで女性との差が開いているとは…驚きです。
また、以下の画像はイギリスの孤独担当相ダイアナ・バラン氏が綴った「孤独」についての論文をまとめたものですが、論文の概要に「孤立」「孤独」が招く、驚くべき死亡率の上昇とありますが、社会的孤立での死亡率は、なんと29%も上昇していることが分かります。
では、実際どのくらいの人が生活している中で「孤独感」を感じているのでしょうか?
下記の画像は、政府が調査した「孤独を感じている人の割合」の調査結果です。調査は全国の16歳以上の約2万人を対象に行われ、有効回答率は59・3%でした。つまり約1万1860人の回答がグラフに詰まっていることになります。
参考元:孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年実施)
グラフを見てみると、なんと4割の人が孤独感が「ある」と回答した結果が出ています。
私はこの調査結果を見た時、思っていたより多い…と感じましたが、みなさんはどうでしょうか?
調査で回答した1万1860人のうち4,744人が孤独感を感じたことがあると考えたら、私と同じく想像よりも多いと感じる人は多いのではないでしょうか?
孤立・孤独は死亡率の上昇に繋がります。では人はどのタイミングで、どのような場面で孤独感を感じてしまうのか?そしてなぜ孤独死に繋がっていってしまうのか?死亡率の割合が高い高齢男性にスポットを当て、「職場での孤立」「家庭での孤立」「社会での孤立」に分けて解説していきます。今回は「職場での孤立」についてお話します。
目次
職場で孤立してしまう原因
今回フォーカスを当てる「職場での孤立」ですが、職場の雰囲気や人間関係など、本人に非がないことや、周囲の人に対する態度が影響していたり…と「職場」という範囲に絞っても孤立してしまう原因には様々なものがあります。考えられるものをいくつかまとめてみました。
職場の雰囲気に馴染めない
職場で孤立してしまう原因としてまず考えられるのは「職場の雰囲気に馴染めない」ケースです。
職場の人との相性が合わず、会話する際にストレスを感じてしまう人は、自然と職場であまり喋らなくなってしまう傾向があります。職場の人は自分と「同じ組織で活動している」根底があるため、話題としては豊富にあるはずですが、会話する際にストレスを感じてしまうと、自然と「話したくないオーラ」が出てしまうかもしれません。
また、入社したけど実際にやりたかった仕事と違った…なんて気持ちを持つ人も多いのではないでしょうか?
仕事内容が思っていたのと違うと感じてしまう人も職場に馴染めずに孤立してしまう恐れがあります。仕事に強いストレスを感じてしまうことで、職場の人との会話も減ってしまうと関係が進展しないため、いずれ殆ど会話しない状況になってしまうかもしれません。
自分に自信が持てない
職場で自分に自信を持つことができない人も孤立してしまう恐れがあります。
職場の人との雑談もコミュニケーションとしては大事ですが、雑談以上に仕事でのコミュニケーションが大切です。仕事でミスが多かったりすると、「自分は本当にここにいていいのだろうか」、「仕事で役に立てているのか」、「ミスばっかりで迷惑しかかけてないや」などの気持ちで胸がいっぱいになってしまいます。このような状態になると、職場の人に話しかけることも気まずく感じてしまい、職場での会話がなくなってしまいます。
一人で仕事をする時間が長い
自分が担当している仕事の内容が、一人で作業する時間が長い特徴がある場合も孤立してしまうリスクがあるでしょう。
チームで仕事をしていたりすると、コミュニケーションをとる機会が自然とありますが、主に一人で作業をする時間が長い職種に就いている人は必然的にコミュニケーションの機会が少なくなりがちです。
周囲の人は避けているつもりはなくても、会社の人が楽しそうに会話している姿を見ると、孤立感を抱いてしまう原因になるでしょう。
また、リーダーや管理職のような会社で指揮や指導をする立場の人は、立場上社員が話しかけにくいことも考えられます。立場上仕方のないことですが、気軽に雑談したり、愚痴をこぼせるような相手が職場にいないと、孤立感を感じてしまうことがあるでしょう。
人間関係でのいじめ・パワハラ・モラハラ
「本人に聞こえていると分かっていての悪口・陰口」や「容姿や人間性、能力の否定」、「飲み会などの会社の集まりに誘わない」などといった、人間関係での明らかなパワハラ・モラハラ・いじめがある場合は、孤立感を感じる大きな原因になってしまうでしょう。
実際に入社したばかりの青年がパワハラで自殺に追い込まれてしまった事件が過去に起きています。
職場内に味方になってくれる人がいれば精神的な支えになりますが、もし味方がいない状態であれば必然的に孤立していると感じてしまうでしょう。
職場の人間関係がそもそもよくなかったり、いじめのターゲットを作って弄ぶようなタイプの人間がいると、職場の人間関係から意図的に切り離されてしまい、孤立した状態を変えることが難しくなってしまう可能性があります。
職場の人間が次々と離職してしまう
職場の環境が悪いと、おのずと離職率も高くなります。雰囲気が悪いと誰もが働くことに対して苦痛を感じてしまうため、辞めたいと思うのは当然のことです。周りの仲が良かった上司や同僚が辞めていき、自分だけが職場に取り残されてしまったら、きっと不安感や孤独感に襲われてしまうでしょう。
仲が悪い職場の人だったり、パワハラやモラハラの加害者と一緒に取り残されたら本当に最悪ですよね…正直想像するのも嫌になります(笑)
このように職場での頼れる人や仲がいい同僚がいなくなってしまうことで、自然と孤立化していってしまう恐れがあります。
相手が不快な気持ちになるような態度をとっている
職場の人からのいじめやモラハラが原因で孤立してしまうという話をしましたが、逆に相手が不快な気持ちになるような態度をとっている人も孤立する可能性があると言えるでしょう。
イライラして職場の人に感情や行動をぶつけてしまったり、周囲の人に嚙みついてばかりいると、周囲の人からの印象は下がる一方です。いざ自分が困ったとき、味方となってくれる人はいなくなっているでしょう。
結果的に人が遠ざかってしまい、職場で孤立してしまう恐れがあります。
職場で孤立してしまったら
職場で孤立していたり、孤立する兆しを感じたら、まず状況を可能な限り改善できるように行動を起こすことが重要です。大体の人は「そんなことが最初からできてたら孤立しないだろ!」と感じると思われます。ですが、実際に行動しなければ状況を改善することは難しいでしょう。勇気を出して一歩踏み出すことが何よりも重要なのです。
孤立している・孤立する兆候がある人は以下の対策を実施してみましょう。
日常的な挨拶や仕事のやり取りなど、職場の人とのコミュニケーションを大切にする。
もともと人と話すのが得意じゃなくて、あまりコミュニケーションをとっていなかった場合、職場の人から「話ずらい人」と認識されているかもしれません。その状態から一気に「話しやすい人」を目指すのは非常に難しいと思われます。なので、「一気に」ではなく、「徐々に」行動することが大切です。
出勤時や退勤時に職場の人と目を合わせて「おはようございます」や「お疲れさまでした」といった挨拶をしたり、仕事のやり取りをしてる時にうなずきながら話を聞いたりするのが効果的でしょう。
人は自分のことを受け入れてくれる人や、自分に興味を持ってくれる人に対して好意を持ちます。日常的な挨拶やしぐさ、受け答えの様子から「自分に興味がないんだな」とか、「話ずらい人だな」と思われてしまわないように、簡単な挨拶や小さなコミュニケーションから始めてみるのはいかがでしょう。
笑顔を意識してみる
人と話す際に、笑顔を意識してみるのもオススメです。
無口・無表情の人はどうしても近寄りがたい雰囲気が出てしまうでしょう。笑顔でいることで、明るい印象を与えることができ、「話しやすい人」として認識してもらえるかもしれません。
でも、だからといって無理やり笑顔を作るのもしんどいですよね。もちろん自分の感情をだましてまで笑顔でいる必要はありません。
例えば、心の中で怒っているのに笑顔を作り続けてしまったりすると、自分の気持ちと表情との差に疲れてしまいます。挨拶する際や仕事の連絡をする時といったふとした瞬間に笑顔で接する意識を持つと、周囲の人からの印象も良いものに変わっていくでしょう。
自分の仕事に真摯に取り組んでみる
大前提として、職場は仕事をする場所です。仕事をスムーズに進めるために人間関係は大切な要素になりますが、仕事をする上では副次的な要素であるとも考えられます。思い切ってそう割り切ってしまい、自分の担当する仕事を集中し、真摯に取り組むのも一つの方法です。
会社にとって、仕事に真摯に取り組む人や、成果をあげる人はとても大切な存在です。仕事をしっかりこなしている人をないがしろにするなら、そもそも社会人としての本分を履き違えてる人間がいる職場の可能性があります。
また、担当した仕事をただこなすだけでなく、できる限り周囲の人を手伝う・協力するよう意識して行動することが大切です。仕事で協力してくれた人に対して嫌悪感を持つ人はいません。協力してくれたことに対して感謝してくれる人が出てくるでしょう。
仕事に真摯に取り組み、会社からの評価を上げることで、同時に周囲の人からの評価を上げることにも繋がるでしょう。また、「自分は会社で必要とされている」意識が芽生えれば、自分の自信にも繋げることができます。
相手を不快にさせている行動や言動がないか振り返ってみる
職場で孤立していると感じたら、一度これまでの自分自身の言動や行動を振り返ってみましょう。
何気なく言っていた言葉が相手を不快な思いにさせていなかったか、良かれと思った行動が相手にとってお節介になっていなかったか、などの今までの職場での行動を振り返り、自分の振る舞いに問題はなかったか確認していきます。もしも思い当たる節があったら、自分の良くなかった点を治せるように心がけ、実際に行動を変えていきましょう。
行動が変われば、周囲の反応に徐々に変化が起きていくはずです。
もちろん、孤立してしまう原因は、本人自身に問題があるケースだけではありません。本人に非がなかったとしても、周囲からの「何となく話が合わない」といった感覚によって避けられてしまうこともあるからです。
孤立してしまった原因を全て自分のせいにすることは決してないので、過度に思い詰めることはやめましょう。
職場とは関係がない第三者に話を聞いてもらう
職場で孤立感を感じている人は、職場に悩みや相談を聞いてくれる味方がいない場合が多いです。
自分の状況や今の気持ちを聞いてもらうことで心が軽くなることもあるので、職場とは関係がない第三者に相談するのは精神的負担を軽減する上で有効な方法と言えます。
誰にも話さないまま一人で悩みを抱え込むのは精神的に大きな負担となります。家族や友達など、心を許せる相手に自分の気持ちや考えを聞いてもらい、少しでも心の負担を減らすことを考えてみましょう。
また、職場外で新しく交友関係を広げたり、相談できる人を作るのも一つの方法として考えられます。
例えば、趣味の集まりだったり、地域のスポーツ団体などに参加することで、新しく人間関係を築くことができます。また、現在ではX(旧Twitter)やインスタグラムなどのSNSアプリを利用することも有効な方法でしょう。顔を見て話すことが苦手な人でも、比較的簡単に友達を作ることができます。
職場外で人間関係を作れれば、人との付き合いで得られる充実感や経験・学びを得ることができ、なによりプライベートでの楽しみが増えることが大きいでしょう。
思い切って転職する
様々な対策を試しても改善が難しいと感じたら、転職によって働く環境を思い切って変えてしまうのも一つの方法です。環境を一新することで、こじれてしまった人間関係をリセットすることができます。
人間関係の悩みで転職することは「逃げ」と感じるかもしれませんが、環境を変えることしか手立てがないのなら、迷わず転職に向けて行動することも一つの選択肢になるでしょう。
そもそも職場全体の雰囲気が良くない場合は、就業する環境として好ましくないと考えられます。こういった場合は、転職することで人間関係をリセットすることは有効な方法となります。
転職=解決策にならない場合がある?
人間関係でたくさん悩んだ結果転職に踏み切る人は「職場が変われば問題が解決する」と思いがちです。でも、転職することが必ず問題解決に繋がるとは限らない点も考慮する必要があります。
まず、転職すると職場の人間関係を全てリセットすることができますが、これは同時に、ゼロから再び人間関係を構築していかなければならないということです。
新しい環境には「合わない人」が必ずいるでしょうし、パワハラやモラハラの加害者となる人がいる可能性もあります。もし、職場で孤立してしまった原因が自分自身の行動や言動が関係しているとすれば、新しい職場でも同じような状況になってしまうことも考えられるでしょう。
人間関係が理由でせっかく転職したのに、また嫌な思いをするなんて嫌ですもんね…
転職先でも同じことが起きないように、孤立してしまった原因を自分でしっかり見直し、理解することが大切です。
まとめ
孤立、孤独が原因で上昇する死亡率、その29%を占める社会的孤立。
今回ご紹介した「職場」での孤立が原因でストレスを感じる。
そのストレスが火種となって家族に当たってしまい、結果「家庭」での環境が悪くなってしまう。
家族と疎遠になってしまったことが原因で「社会」的孤立に…というように連鎖的に孤立していってしまう場合が多いです。もちろん「家庭」での孤立が原因で社会的孤立に繋がってしまう場合も考えられるでしょう。
「家庭」での男性の孤立についてはこちらの記事でご紹介しています。
「孤独死」発生件数の約8割は男性。その原因は「孤立感」から来ていた?2/3家庭編|特殊清掃のスイーパーズ (sweepers365.com)
社会的孤立に繋がる原因として、今回は「職場」での孤立について解説いたしました。
孤立感を解消できれば、孤立、孤独が原因である死亡率の減少に繋がります。もし職場で孤立感を感じているなら、今回ご紹介した対策方法を実施してみてください。ちょっとした挨拶などの小さな一歩でも、環境を変える大きな一歩に変わっていくでしょう。