「超高齢化社会」、「核家族化の加速」など、現代社会とかつての日本社会は、家族のあるべき姿というものも多様化しています。
親世帯と子世帯が別々の地域に住むことも当たり前になっている昨今では、背景はそれだけではありませんが、1人暮らしのお年寄りも年々増加傾向にあります。
日本の総人口は1億2,550万人(令和3年10月時点)、65歳以上の高齢者の割合が28.9%です。
そのうち、単身暮らしの高齢者は、男性15%、女性22.1%と、こちらも引き続き増加は止まらないとされています。
高齢化率(65歳以上/日本の総人口の割合)と将来推移の推計
参考:内閣府 家族と世帯
この現状から波及される課題も山積みであり、その中の1つとして昨今問題とされている「単身高齢者の孤独死」について解説していきます。
中々事前に向き合って考えることができない内容ですが、この記事を読むことで家族と離れて暮らしている方がもしいるなら、事前に対策を講じることができるかもしれません。
ぜひ最後まで読み進めてください。
目次
身内の孤独死|親族のとるべき対応
一般社団法人日本少額短期保険協会が2021年6月に発表した孤独死現状レポートによると、孤独死による死亡人数は男女あわせて5543人になり、前年度4448人から1095人増加していることが分かります。
東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数
参考:一般社団法人日本少額短期保険協会 第6回孤独死現状レポート
社会問題化しつつある孤独死問題。
親族が連帯保証人や相続人となる方が大半ですが、その場合、家族は何から対処するべきなのでしょうか。
1章では身内の孤独死の知らせを受けた後、親族がやらなければいけない内容を5つに分けて解説していきます。
孤独死発見の連絡
本記事では賃貸物件に住まれていた家族が孤独死をした場合、親族はどのような手続きをしていく必要があるのかを解説していきます。
賃貸物件の場合、不動産管理会社、大家または警察より親族に連絡が入ります。
通常は賃貸物件契約時の連帯保証人へ連絡し、もし不通の場合は1親等、2親等の順番で連絡の取れる方へ亡くなった旨が伝えられます。
警察現場検証
物件内で死を遂げた場合、警察による現場検証によって死因の原因や経緯を検証します。
室内にある故人の所有物や貴金属などは、死亡経緯が判明するまで警察にて保管されます。
万が一犯罪よる死という可能性もゼロではないため、現場検証時は、身内でも大家でも立ち入ることはできません。
身元確認
故人の身元を特定するために、親族は身元確認の取れる書類を持参する必要があります。
連絡がきた時点で次の書類を揃えましょう。
- 身元引受人の身分証、持ち合わせていれば故人の身分証
- 住民票
- 戸籍藤本(故人との関係が分かるもの)
- 認印
また、その他今後必要になる準備物も一緒に用意しておきましょう。
- 喪服
- 着替え・防寒着
- 数珠
- 現金
- スマホの充電器
遠方から出向く場合は往復も容易ではないため、数日間滞在することを念頭に置き、必要な物を準備します。
遺体は警察署内の霊安室で保管され、腐敗を防止のため低温管理で保たれています。
そのため、季節に関係なく防寒着は1着用意しておくと良いでしょう。
身元確認後は、葬儀屋、原状回復時の清掃業者への連絡など、ご自身でも調べることが多くなるため、スマホのバッテリー残量が案外早く無くなってしまいます。
いつでも充電できるよう、携帯用の充電器も準備しましょう。
警察署で死因特定は数日かかる
すぐに遺体が親族の元に引き渡されるわけではなく、警察署で死因を特定するために数日を要します。
死亡の原因や事件性が無いと特定されはじめて死体検案書と共に親族に引き渡されます。
おおよその目安は、冬の期間は3〜5日程、夏の期間は1週間〜10日程になります。
死因特定の間に行うべきこと
遺体の引き取りができない間も親族は手続きを進めておく必要があります。
手続きの手順が予測できないことや、亡くなったことへ向き合う時間も取れず、落ち着いて考える余裕がなかなか確保できません。
だからこそ、遺体の引き取りまで数日要する間は早めに次の事を進めておいた方が良いでしょう。
- 特殊清掃会社の選定と依頼
- 葬儀会社を決める
原状回復のための特殊清掃会社の選定と依頼
孤独死の場合、すぐに発見することが難しく、死後数日経過して発見されることも少なくありません。
死後数日経過した状態は、腐敗が進み、室内に腐敗臭や死臭、体液や血液で汚れていることもあります。
立ち入りが解除された後も、親族が亡くなった部屋を直視することは、残された家族にとっても非常に鎮痛な気持ちで精神的な苦痛を要します。
このような状況の部屋を清掃する会社が特殊清掃会社になり、親族の代わりに室内を綺麗な状態に戻すことができるのです。
さらに、遺品整理も同時に片付けてくれるため、ご自身で行おうとはせずに特殊清掃会社に依頼するようにしましょう。
全般的に善良な特殊清掃会社がほとんどですが、中には高額請求を要求する悪質な会社が存在することも実情です。
善良な特殊清掃会社の選び方は7章で紹介するので参考にすると良いでしょう。
葬儀会社を決める
孤独死の場合、一般的なお通夜や告別式を執り行う葬儀よりも、直接火葬場へ運び、冥福を祈る直葬を選ばれる方が多いです。
警察署から遺体を引き取る際には、葬儀会社が決定されている状態でなければいけないので、複数の候補をあらかじめ挙げておきましょう。
死因特定、入室許可が下りる
死因特定後、入室許可が下り、遺体の引き取りが可能になります。
その際、選定した葬儀社に連絡をし、警察署に向かいましょう。
同時に警察署で保管していた故人の貴重品も引き取ることができます。
各種行政手続き
葬儀や火葬を行う前に、行政への手続きを済ませておかなければいけません。
1−5章では親族が行う手続きを紹介していきます。
手続き内容 | 手続き方法 | 期日 |
死亡届 | 死体検案書を持参し故人住んでいた 市町村へ届出 | 7日以内 |
火葬許可申請書 | 火葬前までに市町村へ提出 | 火葬手続きまで |
年金受給停止手続き | 国民年金受給者であれば停止の連絡をする | 14日以内 |
健康保険資格喪失手続き | 保険証や後期高齢医療制度を 利用していた場合も返還する | 14日以内 |
介護保険資格喪失手続き | 介護保険証を返還 | 14日以内 |
住民票の抹消手続き | 故人の住民票が置いてある市町村で抹消の 手続きをする | 14日以内 |
相続関係 | 相続手続き、放棄も3ヶ月以内に行う | 3ヶ月以内 |
スマホやライフラインの解約手続き | 各種ライフラインなどは速やかに 解約手続きを行う | 速やかに |
遺品整理
現場検証中に発見された貴重品などは警察署にて保管され、遺体の引き渡し時に保管された遺品を受け取ることができると1−4で解説しました。
しかし、室内には家具や生活用品など人が生活する上で必要な物が残っている状態です。中には銀行口座や大切な書類も残されているかもしれません。
Sweepersを含め特殊清掃と同時に遺品整理もまとめて作業できる特殊清掃会社があります。
6章で詳しい解説をしますが、同時に2つの作業を依頼することで親族の方の負担も軽減されるため、遺品整理も対応できる特殊清掃会社を選ぶようにしましょう。
孤独死と孤立死の違い
社会から孤立をしてしまい、その後死を遂げる方が増加していることにより、各自治体も孤立防止の対策や見守り隊などを派遣し、社会との繋がりを維持できるよう工夫しています。
ここで、孤独死と孤立死の2つの言葉の違いを解説しましょう。
孤独死とは、どなたにも看取られず何らかの原因で死を遂げたことですが、親族や知人などは薄いながらも繋がっている状態ではあったものの、亡くなる際は一人だった状態のことを表します。
一方、孤立死とは、親族や世間ともほぼ交流のない状態で、一人で亡くなった状態です。
孤立死の方が、周囲との交流が無い状態に近く、高齢者だけでなく、昨今では若年層による孤立死も増加しています。
孤独死の現状回復の考え方
賃貸物件を借りる際に預ける敷金は、退去時の原状回復費用に充当され、残った残金が借主へ返金されます。
これは通常の退去の際でも、今回のテーマである孤独死による解約でも同様の考え方になります。
国土交通省では原状回復のガイドラインを明示しているので、参考にすると良いですね。
もちろん通常の退去とは室内の状態も異なるため、原状回復の範囲や、特殊清掃は必須になるのかが疑問に思うところでしょう。
実際は室内の状態によって特殊清掃に依頼するべきかどうかが分かれます。
亡くなった直後に発見された場合は死臭や体液などは染み付く心配はありませんが、死後数日経過した状態で発見されると、床材や壁紙、また躯体にも死臭や体液が染み付き、場合によっては害虫なども発生することもあるため、このような場合は特殊清掃が必須になります。
しかし、最終的には大家や不動産管理会社の意向も入るため、話し合いが必要になるケースもあるでしょう。
大家によっては、大家経由のハウスクリーニング会社や特殊清掃会社を指定される場合もあるため、契約条項を今一度確認しておくことをおすすめします。
原状回復費用は誰が負担するのか?
原状回復費用は、賃貸人(大家)と賃借人(借主)でそれぞれ負担し、室内を借りる前の状態に戻します。
この負担割合の考え方で争いに発展する事例も少なくありません。
基本的な考え方は、経年劣化による損耗で、借主も室内をごく一般的に使用している場合は貸主負担になります。
一方、借主の故意によるものや、扱いや使い方が雑さ故に劣化や損耗した箇所については、借主負担によって原状回復がなされます。
契約時に預けた敷金の金額にもよりますが、原状回復の借主負担範囲が敷金内で納まるケースも多くあります。
しかし、上記は通常の退去ケースであって、孤独死による契約解除になると敷金内で納まるとも言い切れません。
まずは、誰が原状回復費用を負担するのかをケース別で解説していきます。
相続人が負担する場合
故人に相続人がいる場合、相続人が原状回復を受け継ぐことがあります。
相続人には、預金や株、不動産などのプラスの財産と、借り入れなどの所謂負債も相続されることになるため、どちらかの財産のみを相続するという選択は相続人にはありません。
負債額があまりに多く相続放棄を希望するのであれば、プラスの財産も含んだ相続放棄をすることになります。
この方式から、原状回復のみを放棄するという選択は相続人にはないということです。
考え方としては、借りている故人の賃貸契約内容を相続人が受け継ぐことになるため、原状回復費用を負担するという考えに至ります。
原状回復費用が敷金を上回るようであれば、故人の預金から相殺することも可能になるのです。
連帯保証人が負担する場合
賃貸借契約に連帯保証人を立てている場合、その連帯保証人は故人の相続人と共に原状回復費用を負担します。
しかし、連帯保証人は、求償権の権利があるため、一時的に費用を負担し、後に相続人に負担費用を請求することができるのです。
相続人と連帯保証人が同一人物の場合
故人の相続人であり、連帯保証人である場合、仮に相続放棄し原状回復義務を回避できたとしても、あくまで賃借人の権利を相続放棄したことになるため、連帯保証人としての立場は変わりません。
よって、相続放棄しても連帯保証人として原状回復義務を負わなければいけないのです。
孤独死を取り巻くトラブルと対応策
孤独死後、部屋を元の状態に戻し、新たな借主を入居させなければならない大家側の意図から、親族や連帯保証人へ高額な損害賠償を請求されたという事例もあり、現状回復を巡るトラブルは大家側も親族側も懸念される事項になります。
ここは結論から先に伝えると、「入居者が自殺でない限り、大家が相続人や連帯保証人に損害賠償を請求するのは難しい」と解釈されています。
そもそも原状回復義務とは、借主の故意や過失によって物件価値を意図的に下げた場合、現状回復の費用を借主が負担するという考えが大前提になります。
この考え方に沿うと、孤独死を遂げた借主が病死、突然死によって亡くなった場合、故意や過失はなく、原状回復の負担義務は発生しないことになります。
しかし、自殺や殺人によって室内で亡くなった場合は上記の考えとは異なるので注意が必要です。
過去、孤独死によって損害賠償が認められた事例はありますが、かなり遡った年代になり、その当時の社会的な考え方や時代に沿った道徳などの背景があったとされています。
特殊清掃業者に依頼した方が良い理由
これまでも幾度と伝えていますが、孤独死の多くは発見までに数日経過している状態で亡くなられています。
孤独死の現状回復には特殊清掃業者に依頼し、室内を全て元の状態に戻してもらう方法がベストですが、一般的なハウスクリーニングの方がコストもかからないのが実情です。
親族や連帯保証人としては、なるべくコストのかからないハウスクリーニングで対応していきたいのが本音でしょう。
しかし、孤独死のあった室内は特殊清掃業者でしかできない清掃内容もあるため、6章では特殊清掃業者に依頼をした方が良い理由を解説しています。
過去の記事でも特殊清掃内容を紹介しているのでご参考ください。
特殊清掃業者に依頼した方が良い理由その1
発見まで数日間放置状態になっていると、季節によって腐敗の進みが早くなり、体の中から体液や腐敗臭などが外へ排出され、部屋全体や、場合によっては床や柱などに染み込み、近隣住民の部屋まで臭いが行き渡ることもあります。
特殊清掃内容がハウスクリーニングと違うのは、掃除方法と清掃器具、使う薬剤になります。亡くなられた方特有の死臭は、特殊な薬剤や特殊器具でないと中々取り除くことができず、室内に落ちている体液を取るのもしかりです。
場合によっては、害虫が室内に落ちている可能性もあるため、害虫を隈なく駆除することができるのは特殊清掃業者の清掃方法になります。
特殊清掃業者に依頼した方が良い理由その2
室内には特殊清掃と同時に、故人の遺品や残置物が残されているため、この所有物の回収や整理も必要になります。
特殊清掃業者の中には遺品整理も同時に対応できる会社があるため、別々の会社に依頼するよりもコストを抑えられるメリットがあります。
Sweepersでも孤独死における特殊清掃と遺品整理の同時対応が可能です。
また、孤独死後の対応は期日に余裕が持てないため、必要であれば即日、緊急対応し、現場に駆けつけ特殊清掃と遺品整理に入らせていただきます。
建築会社が主軸事業になるため、建物の構造や躯体などの状況把握もでき、場合によっては建物の一部を解体し完全に消臭することも可能です。
Sweepersでは解体工事業の登録免許も保持しているため、解体が必要なケースも正確な判断ができ、最後まで責任を持って原状回復作業に対応させていただきます。
さらに、故人が女性だった場合、女性スタッフのみの対応を希望されるお客様もいらっしゃいます。
突然のご家族の死によってご遺族の方々の悲しみに寄り添い、女性ならではの気配りや心のこもったサービスをご提供致します。
女性スタッフのみでのチーム体制も整えているので、ご要望の際はお気軽にお問い合わせください。
優良な特殊清掃業者の選び方
全国で特殊清掃業を生業としている業者数は2018年当時で5000社以上登録されており、その当時も5年で15倍程業者数が増加しているという数字を叩き上げました。
背景には核家族化や家族間の希薄が理由とされ、高齢者が単身で住む数も比例するように増加しています。
2022年現在の特殊清掃業者数の情報は挙がっていませんが、上記の公式を当てはめると、特殊清掃業者の数は増加していると予測できます。
7章では数ある特殊清掃業者の中から優良業者の選び方を4つのポイントに絞って解説していきます。
料金体系がわかりやすい
非常に残念な話ですが、特殊清掃業者の中には、見積もりの際いい加減に算出し施工段階で追加費用が発生するような業者が存在します。
基本的に事前見積もりの対応をしている業者が一般的であるため、見積もり時に料金体系が分かりやすく、追加費用はあるのかないのかを確認することが重要です。
中には、さまざまなサービスを1つのパック料金として提示している特殊清掃業者もあるため、スケジュールに余裕があれば、数社見積もり依頼することをおすすめします。
遺品整理も対応
特殊清掃と遺品整理をそれぞれの業者に依頼をするのは、最もコストのかかる方法です。
特殊清掃と遺品整理を同時に対応できる業者は、清掃手順の流れの中に遺品整理を組み込んでいるため、部屋全体だけでなく、遺品にも除菌消臭作業を施してくれます。
また、不用品を搬出する際は、ご近所に臭いの元が拡散されないよう工夫しながら運び出すことができます。
それぞれの業者に依頼することで、何度も足を運ばなければいけないご家族の心情を察すると、1社で完結することで負担が軽減されることでしょう。
臨機応変な期日対応
孤独死の多くは急を要する対応が必要になります。
特に発見されるまで日数を要し、さらに夏場ともなると、原状回復までの期間もタイトスケジュールになることは言うまでもありません。
即日対応できることはもちろんですが、Sweepersでは365日24時間対応可能なので、緊急の場合でも即対応が可能です。
臭いなど見えないものを可視化
目に見えない臭いは人によって感じ方に差が生まれてしまうため、特殊清掃を入れることで完全に臭いを除去することが望ましいでしょう。
特殊清掃業者によって使う器具は様々ですが、Sweepersではオゾン脱臭機を使い、孤独死によって発生する臭いを徹底的に脱臭することができます。
また、施工後は、ニオイデータを可視化でき、完全に脱臭したことを証明することができます。
まとめ
身内の孤独死は、親族にとって精神的な負担が突然襲ってくる事実です。
その事実と向き合う間もなく、親族が取るべき対応や、やらなければいけない項目も多く、次々とこなしていかなければいけません。
本記事では、
- 親族が対応する手順
- 室内の原状回復の考え方
- 特殊清掃の清掃内容と特殊清掃業者の選び方
を解説しました。
もしものときは、迅速な対応とスムーズに進めていく必要があるため、参考にしてもらえたら幸いです。