ここまで二部に渡って「職場」「家庭」での孤立について解説してきました。この2つの孤立が引き金となって発生する「社会」での孤立、今回はこちらの孤立について解説していきましょう。
まだ前回の記事をチェックしてない方はこちらから。
「孤独死」発生件数の約8割は男性。その原因は「孤立感」から来ていた?1/3職場編|特殊清掃のスイーパーズ (sweepers365.com)
「孤独死」発生件数の約8割は男性。その原因は「孤立感」から来ていた?2/3家庭編|特殊清掃のスイーパーズ (sweepers365.com)
目次
男性の社会的孤立
「社会的孤立」とは、家族や地域社会との交流が、客観的に見て著しく乏しい状態のことを指します。
まずはこちらの画像をご覧ください。「職場編」の導入文でも紹介したイギリスの孤独担当相ダイアナ・バラン氏の孤立・孤独の死亡率の上昇についての論文をまとめたものです。
死亡率の上昇の原因の一つにある「社会的孤立」、その死亡率は29%も上昇するとされています。
他にも孤独が原因で26%上昇、一人暮らしが原因で32%上昇というように、孤立・孤独が引き金となって死亡率が上昇していることが分かります。
では、社会的孤立を感じる時はどんな状態なのか、社会的孤立になってしまう原因とはいったいなぜなのかを解説していきましょう。
社会的孤立を感じる時
社会的孤立と見られる高齢男性は単独世帯に多く見られますが、単独世帯でも生活していても社会的孤立を感じない人も多くいます。近隣によく散歩をしていたり、誰かと世間話をしている高齢男性を見かけたことはありませんか?これらの高齢男性は社会的に孤立していると感じることは少ないでしょう。
では、高齢男性が社会的孤立を感じる時は一体どのような場面なのでしょうか?以下のようなものが考えられます。
- 家族や周囲の人との関りがない
- 家族からのサポートがない
- 周囲の人との身体的な接触がない
- 誰とも会話をしない
- 周囲の人から無視される
- 外との接点がない
- 居場所がない
- 地域での活動に参加しない
家族や周囲の人との関りがない
家族間のトラブルや環境の悪化により、家族と疎遠・絶縁している人。また、周囲に悩みを相談する人がいない時、孤立感を感じます。悩みがあっても周囲に頼れる人がいなく、相談することができないと社会的孤立感を感じてしまいます。
家族からのサポートがない
悩みや困難な状況に直面した際に、家族からの感情的なサポートがないと孤立感が生じます。自分が悩んだり困ったことがあっても家族が助けてくれない、距離を置いている時に孤立感を感じてしまいます。
周囲の人との身体的な接触がない
家族や近隣住民など、周囲の人との身体的な接触がない場合、社会的孤立感を感じてしまいます。直接会って会話したり、身体に触れたりすることがない時、周囲から孤立していると感じてしまいます。
誰とも会話をしない
誰とも会話をせずに、日々を過ごしている時、社会的孤立感を感じます。周囲の人と会話を全くしないことで、一人ぼっちという意識が芽生えてしまい、社会から孤立していると感じてしまいます。
周囲の人から無視される
家族や周囲の人から無視された時、社会的孤立感を感じます。誰かに悩みを相談したり、頼ろうとした時に周囲の人から無視されてしまうことで、社会から孤立していると感じてしまいます。
外との接点がない人
外出をしない、引きこもりがちな人など、外との接点がない人は孤立感を感じます。家に引きこもっている時間が長いことで、一人ぼっちだと意識してしまい、社会から孤立していると感じてしまいます。
居場所がない
職場を退職したり、家庭環境の悪化により、どこにも居場所がないと感じてしまった時に社会的孤立感を感じます。家庭に居場所がなく、職場が居場所だと思っていた場合、定年退職などによって退職した際に居場所がなくなってしまい、社会から孤立していると感じてしまいます。
地域での活動に参加しない
ゴミ拾いなどの地域での活動に参加しない時、社会的孤立感を感じます。近隣の人との輪に自分が入れていないと感じ、社会から孤立していると感じてしまいます。
日々の生活の中で高齢男性が社会的孤立を感じてしまうタイミングは以上の通りです。もしかしたら共感する場面もあったかもしれません。では、具体的にどのような原因で社会的孤立状態に陥ってしまうのでしょうか。
社会的孤立を引き起こす原因
社会的孤立を感じてしまうことが原因で社会から孤立した状態に陥ってしまいます。
では、具体的にどのような原因で社会的孤立は引き起こされてしまうのでしょうか?以下のようなものが考えられます。
- 外出をしない
- 仕事>家庭の優先度で生活していた
- 家族と疎遠に
- 高齢での離婚
外出をしない
まず考えられるのは外出をあまりしないことです。引きこもりがちな人のことですね。
毎日家の周りを散歩する、買い物をする人は独居生活を送る高齢男性でも社会的孤立とはならないでしょう。何故かというと、散歩をする・買い物をする際に周囲の人に認知してもらえるからです。
定期的に散歩や買い物で外出している人は、「あ、またこの人この道散歩してる」「この人また同じ飲み物買ってる」というように定期的に外出をしている人は外部の人に顔を覚えてもらうことができます。
外出をしない日は「今日は散歩していないのか…」「今日は買い物しに来ないな…」と気にしてもらえることがとても大きいです。
ですが、外出をしないと外との接点を作る機会がなくなってしまうので、何か異常が起きた際に誰にも気づかれずにそのまま亡くなってしまうリスクが高くなるでしょう。
こちらは内閣府が調査した「高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」の中にある「普段外出するか」についてまとめられたデータになります。
65歳以上の男性のデータを見てみると「あまり外出しない」と回答した人が6.3%「ほどんど外出しない」と回答した人が3.7%、まとめると丁度10%の高齢男性が引きこもりがちというのが確認できます。
以外にも女性の外出しない割合が多いことにびっくりしました。でも孤独死の男女別割合は男性が約8割になっているんですよね。
仕事>家庭の優先度で生活していた
家庭での時間や家族との交流よりも仕事を優先しがちだった人は将来的に社会的孤立になってしまう可能性があります。前回の記事の「家庭」での孤立でも解説しましたが、家庭よりも仕事を優先してしまうことで、家族とのコミュニケーションが疎かになり、家庭内で孤立しやすくなってしまいます。
家庭内で居場所がなくなっても自分には仕事があるから大丈夫と思っていても、人間はいつまでも仕事をすることはできません。いざ退職した際に、職場という居場所がなくなり、家庭での居場所もないとすればどうでしょう?その人は居場所がないまま生活していくことになりかねません。
また、家庭を放置気味になってしまうことで、離婚という可能性も出てきます。
こちらは美学俱楽部の「既婚女性の離婚を考えた理由と離婚経験女性の離婚した理由」についてまとめられたデータになります。この中の「家庭を顧みない」を見てみると、およそ10%の女性が「家庭を顧みない」男性が理由で離婚していることが分かります。
以上のことから、仕事を最優先で行動していた人は、いざ自分が退職した際に家族と疎遠になってしまう可能性があります。家族と疎遠になることで、自分の安否をこまめに確認する人がいなくなり、何か異常が起きた際に助けてもらえる可能性がグンと下がることになるでしょう。
また、何か悩み事が発生しても家族に相談することができず、より一層孤立感を感じてしまうかもしれません。
高齢での離婚
熟年離婚により、高齢で単独世帯になってしまうケースもあります。
こちらは「50歳以上の離婚件数の推移」を現したグラフです。2000年から2020年までの20年間数値はあまり変わっていませんが、その件数はおよそ9万件を超えています。ものすごい数です…
子供も自分の家庭をもって、妻は離婚で出て行ってしまった。このような状態になった時、孤独死のリスクが大幅に高まる一人暮らしを余儀なくされることになるかもしれません。
社会的孤立を防ぐためには
社会的孤立を防ぐにはどのような方法があるでしょうか?考えられるものを以下にまとめました。
- こまめに外出をする
- 周囲の人とのコミュニティの形成
- 家族とのコミュニケーションを図ってみる
- 高齢者サロンを利用する
こまめに外出をする
こまめに外出をすることは社会的孤立を防ぐ手段として非常に重要です。簡単な散歩や買い物だけでもいいので、定期的に外出することで近隣住民の方に認知してもらうことができます。
こちらは第7回孤独死現状レポートで公表されているデータを一部抜粋したものですが、男性の孤独死の原因である「病死」は67.8%と多くを占めていることが分かります。
突然病気で倒れてしまった際に、近隣住民から認知されていると、異常に気付いてもらえる可能性が高くなります。
また、適度な運動にもなるので、高齢者に起こる筋肉量の低下や認知症の予防にも繋げることができます。
周囲の人とのコミュニティの形成
周囲の人とのコミュニティを形成することで社会的孤立を避けることができるでしょう。
外出をした際に近隣住民の方とコミュニティを築くことで、異常が起きた際に助けてもらえたり、また、助けを呼ぶこともできるかもしれません。コミュニティの築き方は様々なものが考えられますが、一番簡単なのは散歩や買い物ついでに軽く挨拶をすることでしょう。
外出してる際にすれ違った際に「こんにちは」と一声かけるだけでも、周囲の人に好印象を与えることができます。何度も挨拶をするうちに世間話までできる仲にまで発展させることができるかもしれません。社会的孤立の要因である孤立感・孤独感を和らげることもできるでしょう。
家族とのコミュニケーションを図ってみる
社会的孤立は、家族との関りがない人に発生する傾向にあります。家族とのコミュニケーションを改めて図ってみるのも社会的孤立を回避するのに有効でしょう。
家族とのコミュニティを作ることで、異常が発生した時に頼ったり助けてもらえる可能性が大きく上昇するでしょう。
コミュニケーションを取る方法は様々ですが、一番手軽なのはやはり電話やメールで会話をすることでしょう。もちろん同居している家族がいる場合は、直接会話したり身体的な接触を図ることができますが、社会的孤立は単独世帯に多いため、孤立感で悩んでいる人はこの方法を選びにくいと感じる人が多いかと思われます。
家族と離れていて、単独世帯で孤立感に悩んでいる人は、一度家族に電話やメールで連絡をしてみましょう。
高齢者サロンを利用する
高齢者サロンとは、地域で自主的に運営されている高齢者が気軽に集まることのできる交流の場・仲間づくりの場のことです。地区の公民館や集会所、個人宅などが主な開催場所となっています。頻度もおおむね月1回程度、数時間の活動のため、参加者に負担がかかりません。参加しなければならないこともないので、自由度が高いのもポイントです。
また、高齢者サロンは費用をかけずに楽しむことを基本とし、参加費を募る場合は参加者の負担にならない金額を設定します。
高齢者サロンを利用することで以下のような良い効果が期待できます。
- 楽しみ・生きがいを見出し、社会参加への意欲が高まる
- 介護予防・認知症予防になる
- 仲間・居場所をつくり、閉じこもりを防ぐ
- 生活にメリハリが生まれる
- 自分の健康に関心を持てるようになる
楽しみ・生きがいを見出し、社会参加への意欲が高まる
参加する高齢者ひとりひとりが主体となって活動をつくりあげていくことで、自分の役割や楽しさ、生きがいを見出し、社会参加の意欲を高めることに繋がります。
介護予防・認知症予防になる
高齢者サロンまで出かけたり、サロンの活動で無理なく体を動かすことで、自宅で過ごすよりも身体活動量が増え、介護予防となります。サロンの仲間と会話をすることや笑い合うこと、様々なプログラムで脳を使うことで認知症予防になります。
仲間・居場所をつくり、閉じこもりを防ぐ
高齢者サロンは気軽に立ち寄れる場所、活動を共にする仲間ができることで自宅以外の居場所ができ、閉じこもりを防ぐことができます。仲間同士でお互いのことを気にかけあうようになることで、見守りの効果もあります。
生活にメリハリが生まれる
高齢者サロンを「何曜日の何時から」と定期的に開催することで、参加者が外出して人に合うスケジュールを立て、生活にメリハリを生みます。また、参加者は外出することで身だしなみにも気を配るようになります。
自分の健康に関心を持てるようになる
高齢者サロンでの食事や血圧測定、健康チェックなどの保健指導によって、自分の健康について関心を持ち、生活で実践することで健康を保てるようになります。
このように、高齢者がいきいきと暮らすための環境が整っているため、孤立化の予防・改善に大きな影響を与えてくれるでしょう。
参考元:高齢者の集い・通いの場(高齢者サロン)とは | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
まとめ
今回高齢男性の孤独死の原因である「社会的孤立」。その発生に大きく関係している「職場」「家庭」での孤立について三部に分けてご紹介してきました。如何でしたでしょうか?もしかしたら孤立してしまう原因に自分が当てはまるものがあったかもしれません。
今回の記事の冒頭にある見出し「男性の社会的孤立」でご紹介しましたが、イギリスの孤独担当相ダイアナ・バラン氏の孤立・孤独の死亡率の上昇についての論文をまとめたデータでは、社会的孤立が原因で孤独死亡率は29%も上昇します。その他にも孤独や一人暮らしが原因で死亡率が大きく上昇してしまうことにも触れました。
三部に分けてご紹介してきた様々な場面での「孤立感」。この孤立感はどんな時に発生するのか、どうすれば解消することができるのか、今回までにご紹介してきた「孤立」を感じるタイミングや原因、解消方法をチェックしていただくことで、少しでも孤独死亡率の低下に繋がることを心より願っています。