近年、地球温暖化の影響による異常気象が世界各地で頻発しており、日本も例外ではありません。
特に、梅雨や台風シーズンには、豪雨による洪水や高潮などの水害が発生し、甚大な被害をもたらしています。
水害は、私たちの生活を脅かす身近な災害です。
家屋や家財道具の損壊、交通機関の麻痺、停電、断水など、日常生活に大きな支障をきたします。
また、最悪の場合には人命の損失にもつながります。
2023年7月には、九州地方を襲った豪雨により、多くの犠牲者が出ました。
河川の氾濫や土砂崩れによって家屋が倒壊し、多くの人が孤立状態に陥りました。
この惨事は、水害の恐ろしさを改めて私たちに認識させました。
水害は、私たちの生活に密接に関わるあらゆる場所に影響を与えます。
都市部では、下水道管の逆流や浸水による浸食被害などが発生し、ライフラインの寸断につながります。
農村部では、農作物の被害や土壌の流亡など、農業への影響も甚大です。
また、水害は、私たちの経済活動にも大きな打撃を与えます。企業活動の停止や物流の混乱によって、経済損失が発生します。
水害は、私たちの社会全体に大きな影響を与えるのです。
私たちは、水害を単なる自然災害として捉えるのではなく、人々の命と暮らしを守るために、積極的に対策を講じていく必要があります。
目次
水災害と感染症のリスク
地震やゲリラ豪雨、洪水、津波、土砂崩れ、台風など、自然災害にはさまざまな種類があります。
例えば地震の場合は付随して津波や火災が、台風の場合は看板の倒壊や建物の損壊、水害が二次災害として起こり得ますが、災害の恐ろしい点はそれだけではありません。
洪水によって汚染された水や土壌、ケガをした部分が土や泥に触れたとき、避難所での集団生活をしているとき、リスクが高まるのが「感染症」です。
感染症の発症には「感染源」「感染経路」「免疫力の低下」という3つの要因が関わっていますが、災害時はそのすべてが揃った状態です。
災害によって生活環境が汚染されると、さまざまな病原菌の分布が変化して接触しやすくなり、また特に避難所では「ヒト―ヒト感染」が起こりやすく、さらに栄養不足や集団生活のストレス、睡眠不足によって免疫力も低下しています。
つまり、かなり感染症が起こりやすい状況といえるのです。
水災害時に起こり得る感染症
※国立感染症研究所資料参考https://www.niid.go.jp/niid/ja/disaster/r2-7/10512-r3-7-1.html
破傷風
破傷風は、破傷風菌により発生し、かかった場合に亡くなる割合が非常に高い病気です。
以前は新生児の発生もみられましたが、近年は30歳以上の成人を中心に患者が発生しています。
主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用します。
口が開き難い、顎が疲れるといった症状に始まり、歩行や排尿・排便の 障害などを経て、
最後には全身の筋肉が固くなって体を弓のように反り返らせたり、呼吸困難に陥り、亡くなることもあります。
この感染症の原因となるのが、いわゆる「破傷風菌」なのですが、この菌は、土がある環境や動物の体の中や糞などにいる菌です。
この菌が、大雨による洪水などで一般住宅にも流れ込み、怪我をしていた場合、その傷口から菌が入り感染してしまうといった事例も確認されています。
レジオネラ症
レジオネラ症の潜伏期間は、2~10日といわれています。
レジオネラ症の主な病型として、レジオネラ肺炎が知られています。
レジオネラ肺炎は、全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状に始まり、咳や38℃以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難が見られるようになります。
まれですが、心筋炎などの肺以外の症状が起こることもあります。
また、意識レベルの低下、幻覚、手足が震えるなどの中枢神経系の症状や、下痢がみられるのもレジオネラ肺炎の特徴とされています。
軽症例もあるものの、適切な治療がなされなかった場合には急速に症状が進行することがあり、命にかかわることもあります。
レジオネラ症の原因となる菌も、この自然界に多く存在しています。
基本的な感染経路としては、細菌で汚染された水しぶきや、微粒子(エアロゾル)を吸い込むことで感染します。
河川の水や、側溝の泥水が流れ込んできたという、被害に遭っている場合は、十分に注意すべき必要があります。
感染症対策だけじゃない・・・床下浸水後の消毒作業の重要性
もちろん、床下浸水後の消毒作業のメリットにおいて、前文でご紹介したような感染症を防ぐことができるというのも大きなメリットの一つだと思います。
しかし、それだけでなく、実は消毒を行うことによってさまざまな恩恵を得ることができるのです。
一方で、消毒作業を行わない場合、重篤な問題を引き起こす危険性があります。
ここでは、消毒作業の重要性と、起こり得るさまざまな問題について、詳しく解説していきます。
1.カビや細菌の繁殖を防ぐ
床下は湿気が溜まりやすく、温度もほぼ一定の状態を保ちしやすい環境にあります。
カビは高温多湿の環境を非常によく好み、その環境下で急速に、発生・繁殖を行っていきます。
実際に、床下浸水発生から1週間ほどで、床下全域にカビが繁殖し、目に見えるほど広がってしまうケースもあります。
カビは、アレルギー症状の原因となったり、喘息、肺炎、シックハウス症候群などの呼吸器系の病気の原因になるともいわれています。
また、重篤になり得る他の感染症「破傷風、レジオネラ症」の原因となる菌も、カビ菌同様に消毒作業を行うことで、繁殖を抑制し、健康被害を防ぐことができます。
2.悪臭の発生を防ぐ
床下浸水によって発生する臭いは、「カビ」「汚水」の二つが代表的な悪臭として挙げられます。
これらの悪臭は日常生活を送る上で非常に不快なものです。
皆さんの中で、床下で発生している臭いなのだから、別に気にする必要はないのではと考えたことのある方はいらっしゃいませんか?
これらの臭いはたとえ、床下で発生していても、フローリングや畳などの床材を通り抜け、やがては床上の普段の生活空間まで、悪臭が上がってきてしまいます。
水害現場では、泥水の臭いや、水が腐敗した臭いなど、日常生活に支障が出るほどの悪臭が発生しているケースも珍しくありません。
こうなってしまった場合、いくら床上で、消臭を行ったところでなんの解決にも至りません。
こういった事態を防ぐためにも、消毒作業を行うことによって、悪臭の原因となる菌を除去ることができ、快適な住環境を維持することが可能です。
3.建物の寿命を延ばす
床下浸水によって発生したカビや細菌、害虫は、建物の構造体を劣化させ、寿命を縮める原因となります。
消毒作業を行うことで、これらの問題を解決し、建物の寿命を延ばすことができます。
厚生労働省では、家屋の床下が浸水した際の消毒は、原則として不要とされています。
しかし、消毒をしなくても完全に安心できるかといわれると、決して軽視すべき問題ではないといえます。
前文でもご紹介したように、感染症などの健康被害のリスクや、家屋への経済的被害など、床下浸水がもたらす問題はさまざまです。
“何か”が起きてしまってからでは遅いのです。
床下の消毒を自力で行うことは可能?
結論から申し上げますと、自力で床下の消毒を行うことは、「不可能とは言い切れません」
床下浸水後の消毒は、状況によっては自力で行うことも可能です。
しかし、適切な知識や経験がない場合は、不十分な消毒により二次被害が発生するリスクもありますので、あまりおすすめできないというのが現状です。
本来であれば、専門業者に依頼することを強くおすすめします。
消毒を自力で行う際に注意すべき点とは?
確かに、床下消毒においては、専門業者に依頼することが第一に考えられますが、状況によっては自力で作業を行おうとする方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そのような場合、どういった点に注意すべきか、リスクを交えた上でご紹介していきたいと思います。
消毒前に必ず床下の水抜きと乾燥を完了させる:
水が残っていると、消毒剤の効果が十分に得られず、カビや雑菌の繁殖を促進してしまう可能性があります。
前文でもご紹介したように、カビや雑菌は高温多湿を好みます。
そのため、床下に水が残っている状態では、消毒作業を行ったところで、完全に「発生・繫殖」を抑えることはできません。
これにより、水抜きと乾燥はしっかりと行う必要があります。
適切な消毒剤を選ぶ:
市販の消毒剤の中には、床下消毒に適していないものもあります。
床下の基礎部分には、床束と呼ばれる、建材を支える支柱のような役割を持っている部分があります。
近年、この床束は金属製であることが多く、木材のようにすぐに腐ってしまうということはありませんが、塩素系漂白剤やカビ取り剤などは、金属を錆びさせ、腐食してしまう可能性があるため、注意が必要です。
消毒剤を適切に希釈する:
濃度が高すぎると床や設備を傷めてしまい、一方で薄すぎると消毒効果が得られません。
製品の説明書をよく読んで、適切な希釈濃度を守りましょう。
防護具を着用する:
消毒剤によっては、皮膚や目に刺激を与えるものがあります。
ゴム手袋、ゴーグル、マスクなどを着用して、安全に作業しましょう。
換気を十分に行う:
消毒剤によっては、刺激臭が発生するものがあります。
作業中は窓を開けて換気を十分に行いましょう。
また、床下の湿度を下げるためにも、作業前・作業後はしっかりと換気を行っておく必要があります。
大きなリスクを冒さないための注意点としては、以上のようなものが挙げられます。
これだけでも、なかなか手間がかかりますよね。
これらを踏まえていえることは、こういった部分を気にしなくても良いといったところも、専門業者に依頼することで得られる大きなメリットの一つだと考えられます。
専門業者に依頼する大きな4つのメリット
豊富な知識と経験を持つスタッフが作業を行う:
状況に合わせた適切な消毒方法で、効果的な薬剤を選出し、隅々まで徹底的に消毒することができます。
安心・安全に作業を任せられる:
自分で作業する必要がないため、二次被害を懸念する必要性もなく、安心して作業を任せることができます。
専門的な機材・薬剤を使用する:
業務用消毒機や業務用の薬剤などを用いて、より効果的な消毒を行うことができます。
また、住民の方への被害がないように、健康に害がない安全な薬剤を選出します。
充実したアフターフォロー
作業だけでなく、再発防止策や、そのご家庭に合わせた予防策を提案することができます。
具体的な対策が分からない、何から始めればよいか分からないといった疑問にも、迅速にお応えすることができます。
自力で作業が可能か判断する基準とは?
被害の状況によっては、自力で消毒を行うことも不可能ではないとご説明したかとは思いますが、では実際に、どのような場合は自力での作業が可能となるでしょうか?
床下の水量が多い場合
床下に溜まっている水の量が多い場合は、自力での対処が困難となるケースが多いといえます。
基本的に床下の作業において、何よりも優先して行う必要があるのが、水の排水作業です。
業者であれば、業務用の機械を用いて、迅速に排水を行うことが可能ですが、そのような業務用の排水機器を備えているご家庭は、一般的に見て少ないといえるのではないでしょうか?
日常的に使う物でもなければ、販売価格も、決して手の届きやすい価格ではありません。
一方で、床下の水量が少ない場合は、バケツなどの容器や、家庭用のポンプなどで対処ができる可能性があります。
もし、自力で対処しようか迷っているという方がいましたら、床下に溜まった水分量も判断材料に入れて、検討していただければと思います。
カビが生えている場合
カビは胞子を飛ばして繁殖するため、自力で完全に除去するのは難しいといえます。
また、カビに対しては、市販の薬剤では効果が低い可能性もあり、作業中にカビを吸い込んでしまうといった、二次被害への懸念もあります。
カビの存在が目に見えて分かる、広範囲に広がっているなど、少しでもカビの存在が確認できた場合は、専門業者に依頼して、徹底的なカビ除去と消毒を行うことがベストでしょう。
専門知識や経験がない場合
当然のことですが、床下で作業を行うには、的確な知識と技術力も必要になります。
床下には、基礎だけでなく、配線などの電気設備や配管等、多くの設備があります。
また、薬剤への知識、作業の手順、やり方など、作業を行うにあたって入念に準備しておく必要があります。
もし、作業に何らかの不手際があり、誤った処置を行ってしまえば、重大な二次被害を引き起こしてしまう可能性もあります。
自力で作業を行う自信がない場合は、一度専門業者に相談してみましょう。
まとめ
床下浸水後の消毒は、不必要だという見解があるのは事実ですが、放置しておくことには、さまざまなリスクがあり、消毒を行うことによって、カビや細菌の繁殖を防ぎ、衛生的な環境を保つことができます。
被害の状況によっては、自力で対処することも可能ではありますが、消毒方法を誤ると、二次被害を引き起こす可能性もあります。
消毒を行う前に、必ず床下の水が完全に乾燥していることを確認しましょう。
また、消毒剤は適切な濃度に希釈し、換気を十分に行いながら作業を行うことが大切です。
消毒に不安がある場合は、専門業者に依頼することをおすすめします。
専門業者は、適切な消毒方法で床下を消毒し、二次被害を防ぐためのアドバイスも行うことができます。
床下浸水が発生した場合は、迅速かつ適切な対応が必要です。
普段から、適切な予防策を講じ、快適な住環境を守りましょう。