もし親族が孤独死してしまったら、その部屋の片付けはどうすればいいでしょうか。
また残された遺品はどのように整理すべきでしょうか。
本記事では、孤独死における遺品整理や遺品の片付けについて解説します。
目次
孤独死の遺品整理・片付けの義務は誰にある?
そもそも、孤独死の現場を片付けしたり、遺品整理を行ったりする「義務」は、誰にあるのでしょうか。
孤独死の遺品整理は「相続人」に義務がある
一般的には、孤独死により亡くなった方に最も近しかったり、親しい間柄だった親族の方が、遺品整理などの片づけをすることが多いようです。
ただし、法的な観点で考えると、孤独死の現場を片付ける義務があるのは「相続人」ということになります。
なぜなら、孤独死した故人の遺品を片付けることは、故人の所有財産を相続したり、処分することになるからです。
相続人としては、相続を行うために孤独死の現場を片付けなければならないのです。
「遺言の相続人」と「法定相続人」について
相続人には、大きく分けて「遺言の相続人」と「法定相続人」の2種類があります。
遺言の相続人
故人が公式の形で「遺言」を残していた場合、その遺言で指定されている人が相続人です。
遺言で指定できる相続人は、親族など血縁的に近しい人でなえればならないということはありません。
ただしその場合でも、次項で説明する法定相続人には「遺留分減殺請求」の権利があるため、100%その遺言のとおりに故人の財産を相続できるとは限りません。
仮に遺言で相続人として指定されていても、もし遺言の内容に異議があり、相続人としての指定をなかったことにしたい場合には、「相続放棄」の手続きを行えば、相続権を失う代わり、遺品を整理しなければならないという義務もなくなります。
法定相続人
法定相続人とは、民法により定められた、相続権を持つ人です。
法定相続人は、基本的に以下の優先順で決定されます。
- 配偶者+子どもまたは孫など直系卑属
- 配偶者+親または祖父母など直系尊属
- 配偶者+兄弟(姉妹)
たとえば故人に配偶者がおり、子ども(直系卑属)がまったくいなければ、2番目に繰り上がって配偶者と個人の両親や祖父母(直系尊属)が法定相続人となります。
配偶者は常に法定相続人です。
誰が法定相続人になるかによって、法定相続分の割合は変わります。
遺言で相続人を指定できるのと同じように、「相続放棄」をすれば、遺品整理の義務はなくなります。
しかし、孤独死という特殊なケースでは悪臭などの問題がありますので、その場合でも例外的に特殊清掃の手配のような片付けの責任が発生することもあります。
遺品整理だけを「相続放棄」できない
「故人の財産は相続したい、けれども遺品整理や孤独死の片づけは放棄したい」
そういう希望をもつ人もいるかもしれませんが、基本的にはそれはできません。
故人の遺品整理を行うということは「故人の相続財産を処分する」という意思決定を行うということになるからです。
民法では、「遺産を相続する意思がある」と認められる行動をとった場合には、特殊な事情(詐欺や脅迫など)がない限り、もはや相続放棄はできないと定められています。
つまり、もし孤独死の現場を片付けて遺品整理・不用品の処分をしてしまったら、仮に故人に借金などマイナスの遺産があったとしても、相続放棄できない可能性があるということになります。
孤独死というケースにおいては、法定相続人になる方と疎遠であった可能性が高いでしょう。
そのため生前の財産状況を正確に把握していないことも多いと思います。
ですから、孤独死の当事者の相続人になる場合は、遺品整理を行う前に財産状況をきちんと確認することを忘れないようにしてください。
プロの一言アドバイス
処分できないといっても、金銭的に価値のないもの(ゴミなど)は、処分しても問題ありません。
相続放棄したとしても、次の相続人が管理を開始できるようになるまでは、その相続者に遺品の管理責任があります。
その場合は「相続財産管理人」を指定することで管理義務を回避できます。
孤独死の遺品の片付けと処理
ほとんどの遺品は処分されていることをご存じでしょうか。
孤独死の現場の現実を知れば、その理由がわかります。
遺品の8割は処分されている
一般的な孤独死においては、実は8割ほどの故人の遺品が相続人に相続されず、そのまま処分されています。
金銭的に価値のあるものは相続されることもありますが、金銭的に価値のないもの、大きなものなど、相続に手間がかかるようなものは、ほとんど処分されているということです。
「遺品を8割も捨てるなんて」と思われるかもしれませんが、そこには「孤独死という現場の特殊性」が大きく関わっています。
孤独死の遺品の特徴
孤独死の現場における遺品は、悪臭や細菌などが大量に付着しているため危険です。
孤独死した故人の多くは、近所づきあいや親戚づきあいから離れていますので、亡くなってから遺体が発見されるまでに相当な時間が経過しています。
遺体が発見されるまでに死後何日ぐらい経過しているかというと、平均2~3週間ほどです。中には死後数か月が経過してからようやく発見されるケースもあります。
それほど時間が経過すると、当然のことながら、遺体は腐敗してしまいます。
腐敗した遺体からは死臭が発生し、それが部屋中の物品に染みついていきます。
また、腐敗した遺体からは大量の細菌・ウイルスが発生し、これも部屋中に拡散して遺品に付着してしまうのです。
つまり、孤独死の現場から発見された遺品を引き取るには、染みついた悪臭や細菌をどうにかしなければなりません。その難しさや手間を考えると、重要性が低い家具や衣類、雑貨類などは引き取らず、そのまま処分してしまうことになるわけです。
孤独死の遺品整理は簡単なことではない
あなたが相続人や近しい親族の立場になって、孤独死の現場を片付けなければならなくなったとしましょう。
故人が賃貸物件に住んでいた場合は、賃貸借契約を解除するために現場を「原状回復」しなければなりません。これは素人が行おうと思ってもなかなか簡単なことではありません。
「ただ部屋を片付けるだけ」ではありません。
生前健康だった方の部屋を片付けるのと、孤独死の現場を片付けるのには大きな違いがあるのです。
詳しくは次項で解説しますが、孤独死の現場を片付ける責任が生じた場合には、「特殊清掃」を請け負っている、信頼できる業者に依頼するのが一番です。
プロの一言アドバイス
孤独死の現場が故人の持ち家だった場合も、放置された遺体による影響は近隣に波及していきます。
賃貸であっても持ち家であっても、孤独死の現場は早めに片付けを済ませる必要があります。
孤独死の遺品整理・片付けは業者に任せるべき理由
孤独死の現場は特殊清掃の業者に任せるべきですが、業者にかかる費用を心配する人もいると思います。
しかし、孤独死の現場の片づけは自力で行うことが難しく、料金を払ってでもプロである業者に任せた方が安全です。
腐敗臭の影響
孤独死の現場における片付けで最も苦労するのは、「腐敗臭との戦い」です。
死後、長く放置されてしまった孤独死の現場には、部屋中の物品だけでなく壁や床にも遺体から放たれた死臭がこびりついています。
つまり、孤独死の現場の片付けという作業は、「腐敗臭が充満している空間の中で重労働をしなければならない」のです。
特に気温の高い夏場では、悪臭対策でいくらマスクを装着しても臭いからは逃れられませんし、息苦しくて熱中症で倒れてしまうかもしれません。
そういうことを考えると、悪臭対策の技術とノウハウをもった特殊清掃業者に片付けを依頼したほうが無難です。
孤独死の清掃の難しさ
孤独死の現場を現状回復するためには、「殺菌作業」と「消臭作業」の技術が必要です。
賃貸住宅では、孤独死の影響が残ったままでは物件を引き渡せず、そのままではいつまでも賃貸借契約を解除できないことになりません。
「除菌スプレーや消臭剤があれば何とかなるのでは?」と思うのは、甘いです。
ホームセンターなどで売っているような家庭用の除菌・消臭グッズでは、孤独死の現場に残る細菌やウイルス、悪臭の影響をゼロにすることはできないからです。
悪臭や細菌の他にも、腐敗した遺体の体液が畳にこびりついていたり、大量のゴミに埋もれたゴミ屋敷と化している現場では、素人が何日かかっても作業は進まないでしょう。
その間にも悪臭などの影響は近隣に波及し、いずれはクレームに発展します。近所づきあいにも悪影響を及ぼすでしょう。
このように難しい孤独死の現場は、特殊清掃のノウハウが蓄積しているプロの業者に任せるのが一番です。迅速かつ高品質な仕事をこなして、しっかりと原状回復してくれるでしょう。
特殊清掃と遺品整理はセットで頼む方が安い
遺品整理は、それを専門に行う業者も存在します。ですから、「特殊清掃はA社に、遺品整理はB社に」と別々の業者に依頼することも不可能ではありません。
しかし特殊清掃を業者に依頼するなら、「遺品整理」も同じ業者に依頼するのがおすすめです。
孤独死の現場には特殊清掃が欠かせませんが、遺族がいるなら、遺品整理も清掃しながら行うことになります。
特殊清掃と遺品整理を別の業者に頼んでしまうと、特殊清掃中に清掃作業員の手を止めて、別の業者が遺品整理を行うことになります。手を休めている間も特殊清掃の作業員の稼働時間として人件費がかかってしまうため、効率的ではありません。
特殊清掃と遺品整理を同じ業者が行う場合には互いの作業スケジュールを調整しますので、別々の業者に依頼するとかかるような人件費がかからないのです。
業者に片付けを依頼する際の流れ
孤独死の片づけノウハウのある特殊清掃業者には、どのような流れで作業を依頼すればいいのでしょうか。
業者への連絡と見積もり
業者に特殊清掃を依頼は、まず「見積もりを依頼する」というところから始まります。
業者見積もりというと、複数の業者からの見積もりを比較する「相見積もり」を行うことが多いのですが、孤独死の特殊清掃という仕事の場合は、相見積もりはおすすめできません。
というのも、相見積もりをとると、3~4社の業者が順番に現地を見に来て見積もりを出すという流れになりますので、それで依頼する業者を決め、いざ清掃開始を行うまでにかなり時間がかかってしまうことになるからです。
その間にも孤独死の現場はどんどん状態が悪化していきます。作業を開始する時点で状態が悪くなっていたら、見積もりを出したときの条件も変わってしまうことになります(つまりどんどん費用が高くなっていきます)。
もっとも、特殊清掃の業者と日頃の付き合いのある人はいないでしょうから、どんな業者から見積もりをとればいいのかと悩んでしまうかもしれません。
1社からしか見積もりをとらないと悪徳業者や腕の悪い業者に当たってしまう可能性もありますので、基本的には電話相談し、2社程度から見積もりをとるのがいいでしょう。
あまり悠長に構えずに、最適なスピードで見積もりの依頼を済ませてください。
特殊清掃に実施
見積もりの内容に合意し、契約が完了したら、作業予定日を決め、特殊清掃の開始になります。
特殊清掃の作業は数時間で終わることもありますが、部屋の汚染具合や部屋数などによっては数日間かかることもあります。
賃貸物件で、大家さんから「完全な状態での原状回復」を求められているような場合は、作業量もかなり多くなります。部屋数によっては何人もの作業員を投入し、特殊な器具を用いて孤独死の痕跡を解消していきます。
遺品整理と不用品の処分
遺品整理は、特殊清掃の作業途中で実施することもありますが、清掃作業終了後に行われることもあります。
業者が「貴重品」と「不用(と思われる)品」に分類してくれますので、そこから何を残すかを相談しながら整理作業を進めます。
買い取りも行っている業者であれば、価値のあるのものをそのまま買い取ってもらい、作業費用から差し引きしてもらうこともできるでしょう。
残った不用品は、その特注業者か、下請けの不用品処理業者が処分してくれます。
すべての作業が終了したら、料金を支払って特殊清掃は完了です。
プロの一言アドバイス
もし業者の作業に満足できたら、ネットの口コミサイトなどに良かった点を投稿してあげてください。
そうした口コミは、特殊清掃業者という耳慣れない業者を探している人にとって、有力な手がかりになることもあるからです。
孤独死があった際の遺品整理・片付けの注意点
最後に、孤独死があった際の遺品整理や部屋の片づけで注意すべき点を解説します。
清掃前に部屋に入らない
孤独死の現場を発見してすぐに部屋に入るのは、絶対に避けてください。
その時点では故人の死に事件性がある可能性もあるからです。
まずは110番に連絡して警察に来てもらい、現場を確認してもらってください。
警察が求めてきたために部屋に入ることもあるかもしれませんが、そのようなことがない場合は、警察が現場検証を済ませるまで部屋に入るのはNGです。
警察が現場から撤退した後も、よほどの事情がない限り、その部屋に入ることは避けた方が良いでしょう。
なぜなら、前述のとおり孤独死の現場には死臭や細菌などが漂っており、部屋に入るだけで体調を崩してしまったり、何らかの病気を発症したりする可能性があるからです。精神的にも、決しておすすめできる状況ではありません。
特殊清掃業者が作業を完了して、部屋をしっかりと片付けてもらうまでは、孤独死の現場には足を踏み入れないようにしましょう。
部屋に入る際にはマスクと手袋を装着する
もし孤独死の現場に立ち入る場合は、どのタイミングでも「マスク」と「手袋」を必ず装着してください。
孤独死の現場に残された遺品には、大量の腐敗体液や雑菌が付着しています。
手に雑菌や汚れが付着するのを防ぐために手袋をはめることが必要です。また、腐敗臭や雑菌を吸い込まないようにマスクも着用しましょう。
仮に、特殊清掃の作業が完了した後でもリスクはゼロではありませんので、必ずマスク・手袋を着用して状態で部屋に入ることをおすすめします。
勝手に窓を開けない
孤独死の現場の部屋に入ると、あまりの腐敗臭に、思わず窓を開けてしまいたくなるかもしれません。
しかし、業者の許可なく勝手に窓を開けたりすることはNGです。
なぜなら、窓を開けてしまうと近隣に強い腐敗臭を流してしまうことになるからです。
近隣から、「腐敗臭が洗濯物について取れない」といったクレームが来たり、場合によっては損害賠償を求められたりするケースも珍しくありません。
また、お風呂場で孤独死しているケースでも、水を流したりするのはNGです。
もし遺体が搬出されて現場に残っていない場合でも、浴槽の中には腐った皮膚や髪の毛、ひょっとしたら骨が残っていることがあるからです。
その状態で水を流してしまうと、排水溝が詰まったり、水路に遺体の一部を流してしまうことになるのです。
これらのことを忘れないようにして、特殊清掃業者の許可なく勝手に窓を開けたりお風呂を流したりしないよう注意してください。
遺品は可能な限りきれいな状態で残す
遺品整理をするときは、なるべく「きれいなもの」だけを選んで遺品として残しましょう。
孤独死で死後何日も経過しているような場合、現場には細菌が大量に舞っています。
遺品にも危険な細菌が付着している可能性があるので、なるべくきれいな状態で遺品を残す必要があります。
遺品は、場合によっては、形見分けとして別の方に遺品を譲渡することになるかもしれません。そんな場合、後々の余計なトラブルに発展させないように、汚染された状態で遺品を残すことは十分に注意する必要があります。
除菌スプレーを使うなどして細菌を取り払っておくだけでなく、残したい遺品については業者に「残しても大丈夫か?」と必ず確認してください。
遺品の状態を業者に判断してもらい、残すのが難しい場合は、残念ですが、処分することもやむを得ないでしょう。
プロの一言アドバイス
わからないことは、遠慮せずに業者に確認してください。
特に見積もりの段階では、ほとんどの方にとってはわからないばかりのはずです。
不明な点をそのままにして契約することはないようにしてください。
もちろん作業中でも、気になったことがあれば遠慮なく質問してください。後悔のない特殊清掃を行ってもらいましょう。
【まとめ】遺品整理や片付けは簡単ではない、孤独死の片付けは業者に依頼しよう
孤独死現場の片付けは、素人が行えるような簡単なものではありません。もしできたといしても、後々さまざまなトラブルを引き起こす可能性が高いです。
トラブルなく孤独死現場の片づけを済ませるには、プロフェッショナルである特殊清掃業者を見つけて、特殊清掃と遺品整理を依頼しましょう。
見積もりのことで不明な点があれば遠慮なく確認し、悔いの残らないように遺品整理・片付けを済ませてください。
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