現在多くの大家さんや管理会社を悩ませる孤独死は、年々増加しています。
入居者が孤独死してしまうと、消臭や原状回復など物件を管理する立場の人は大きな負担を抱えることになるでしょう。
いつ起こるかわからない孤独死に備えて、「孤独死保険」というものがあるのはご存じでしょうか。
本記事では2種類の孤独死保険の特徴や、加入するメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
孤独死が起こった際の負担を少しでも減らしたい大家さんや管理会社様必見の内容となっていますので、ぜひご覧ください。
目次
孤独死保険とは?
孤独死保険とは、孤独死によって失われた家賃収入や原状回復の際にかかる費用に対する補償をおこなってくれる保険のことを言います。
通常、物件の原状回復にかかる費用は入居者や連帯保証人が支払います。
しかし、保証人や入居者の親族が疎遠だったり、他界している場合、原状回復費用を支払ってもらうことができず、結局大家さんや管理会社が損失をこうむることになります。
特に自殺や孤独死の場合は、たとえ入居者と疎遠でない親族でも「こちらには関係ない」と見て見ぬふりをするケースも多いのが現状です。
孤独死は、発見が数週間から数ヵ月と遅れてしまうケースも多く、体液や死臭が部屋に染みついてしまったり、害虫が大量に発生しているのも珍しいことではありません。
発見までの時間が長ければ長いほど、原状回復に時間と費用がかってしまうため、大家さんや管理会社様にとってはかなりの負担となってしまいます。
このような状況を避けるために孤独死保険が存在し、以下の2つのタイプに分けることができます。
・家主型孤独死保険
・入居者型孤独死保険
これら2つの孤独死保険にはそれぞれどのような特徴があるのか、詳しくみていきましょう。
家主型孤独死保険
家主型孤独死保険とは、その名のとおり大家さんや管理会社様が加入するタイプの保険です。
入居者が自殺や孤独死をした際に補償され、遺品整理費用・原状回復費用・家賃損失に対する3つの補償が得られます。
自殺や孤独死が起きてしまうと、原状回復をする間はもちろん、一定期間経たなければ今までのように賃貸物件として貸し出すのは難しいでしょう。
「孤独死があった部屋にあえて住みたい」という方を探すことは中々難しく、むしろ敬遠されてしまうのが一般的です。
その期間、その部屋は空室となってしまい、大家さんの家賃収入はなくなってしまいますよね。
家主型孤独死保険では、半年~1年程度の家賃を保証する制度があり、空室になっても収入の一部としてまかなうことができるのです。
保険の種類によって補償金額は異なりますが、おおよそ50~100万円程度に設定されていることが多いでしょう。
ただし、この家主型孤独死保険は1室のみで加入することはできず、賃貸物件の一棟単位、もしくは保有するすべての賃貸物件で加入する必要があります。
保険会社によって「最低〇室以上の加入が必要」と指定されている場合もあるため、予算などと照らし合わせて慎重に選ぶようにしましょう。
入居者型孤独死保険
大家さんや管理会社は、賃貸物件で起こった孤独死に対して損害賠償を請求することができます。
入居者型孤独死保険は、入居者やその親族、関係者に対する保険で、遺品整理や原状回復費用の一部を補償してくれるという内容で、損害賠償にも対応できるでしょう。
基本的に、賃貸で孤独死した際には遺族が原状回復をおこなう必要がありますが、消臭や特殊清掃、床や壁紙の張替えにかかる費用をこの保険でまかなうことができます。
遺族が疎遠になってわからないというような場合には、保険会社が直接大家さんや管理会社様に補償金を支払うという方法もあります。
賃貸物件に入居する際には、火災保険や家財保険への加入が必須となっていますが、入居者型孤独死保険は「特約」扱いとなるため、それら保険に付帯する形となります。
したがって、自殺や孤独死に対する補償だけではなく、火災や地震、水害といった他の災害や万が一の事態にも対応できるのが大きな特徴です。
ただし、家主型孤独死保険と違って家賃保証はないため、空室になっても家賃として収入が入ってくることはありません。
もちろん、「孤独死があった部屋」という事実は告知義務であるため、場合によっては賃料の引き下げも考えなくてはならないでしょうが、そのような事情も補償の範囲外です。
保険料を支払うのは入居者や入居者の親族であるため、大家さん・管理会社様にとっては負担がありませんが、家賃保証がないというのは大きなデメリットとなり得ますよね。
保険料を支払って家賃保証がある「家主型孤独死保険」に加入するか、保険料を支払う必要がない代わりに家賃保証もない「入居者型孤独死保険」に入居者に加入してもらうか、慎重に考える必要があるでしょう。
孤独死保険の種類と内容
家主型 | 入居者型 | |
---|---|---|
保険の種類 | 費用保険(単独保険) | 家財保険(特約) |
保険契約者・被保険者 | 家主・管理会社 | 入居者 |
補償の内容 | 入居者が亡くなった際に家主が被る損失を家主に補償 | 入居者が亡くなった際に入居者の相続人が被る損失を相続人に補償 |
補償に含まれる費用 | ①遺品整理費用 ②原状回復費用 ③家賃損失 | ①遺品整理 ②原状回復費用 |
保険料の設定 | 一戸室ごとに支払い、額は家賃総額から算出される | 入居時に加入し、家財保険の保険料に含まれる |
その他の保険・サービス
孤独死保険は大きく分けて家主型孤独死保険と入居者型孤独死保険の2つのタイプがあるとご紹介しました。
実は、この2つのタイプ以外の保険や新しいサービスもあるためご参考ください。
孤独死が年々増えてきている現状を踏まえて、日々新しい商品が出てきているため情報として知っておくだけでも心強いですね。
1つ目は、「孤独死短期少額保険」というものです。
孤独死短期少額保険は家主型孤独死保険に分類される保険で、その名のとおり1室あたり月額数百円というリーズナブルな保険料で補償を受けることができるのが特徴です。
その代わりにすべての物件で加入が必須となっていますが、1室あたりの保険料が安いため、少ない負担で加入できるでしょう。
保険会社によって補償内容は異なりますが、残っている家財の片づけ費用や葬儀費用、空室や家賃の値下げに対しての補償も手厚い場合が多いです。
一方、見守りサービスが付帯したタイプの孤独死保険も存在します。
こちらの保険は比較的新しいサービスで、「孤独死を防ぐ・早期発見する」を目的とした商品です。
孤独死は発見が遅れることが多いですが、安否確認をすることによって孤独死を防いだり、万が一孤独死が起こってもいち早く発見することができます。
さらに、原状回復費用や事故対応費用への補償もセットになっているため、従来の孤独死保険と同様の補償が用意されていながら、「安否確認」という安心材料も付加されているのは嬉しいですね。
家主型孤独死保険と入居者型孤独死保険、そして新しいタイプの孤独死保険、すべてに良いところと悪いところがあります。
賃貸物件の規模や室数、賃料や管理費の金額によってどのタイプの保険に加入するべきか変わってくるでしょう。
それぞれの保険の特徴やメリット・デメリットを知ったうえで判断することが大切ですね。
保険の利用状況を確認していきましょう
2023年12月時点での孤独死保険の利用状況は以下の通りです。
1. 市場規模
- 2023年の孤独死保険市場規模は約200億円と推定されています。
- 近年、高齢化社会の進展や孤独死問題の深刻化により、市場規模は年々拡大しています。
2. 加入者数
- 2023年の孤独死保険加入者数は約100万人と推定されています。
- 加入者数は近年増加傾向にあり、今後も市場の成長とともに増加していくと予想されます。
3. 加入者の属性
- 孤独死保険の加入者は、60代以上の高齢者が中心です。
- 近年では、40代や50代の比較的若い世代の加入も増加しています。
- 女性の加入者も増加傾向にあります。
4. 保険料
- 孤独死保険の保険料は、年齢や性別、補償内容によって異なります。
- 月額数百円から数千円程度で加入できる商品が多いです。
5. 主な保険会社と商品
- 孤独死保険を取り扱っている主な保険会社は以下の通りです。
- 損害保険ジャパン
- 東京海上日動火災保険
- 三井住友海上火災保険
- au損害保険
- ソニー損害保険
- 各社、様々な補償内容やオプションを備えた商品を提供しています。
6. 最新動向
- 近年、孤独死保険だけでなく、孤独死後の清掃費用や家財処分費用を補償する保険も登場しています。
- また、孤独死予防サービスとセットになった保険商品も開発されています。
家主型孤独死保険に加入するべき大家さんは?
自殺や孤独死の発生数自体はそこまで多くなく、わざわざ孤独死保険に加入するべきか否か迷ってしまう大家さんも多いでしょう。
しかし、いざ自殺や孤独死が起こってしまうと、金銭面の負担だけではなくあらゆる不具合が生じてしまいます。
家主型孤独死保険はそういった事情を緩和してくれる安心材料となるため、加入するべきか迷っている方は下記の判断基準を参考にしてみてくださいね。
下記に当てはまる方はリスクを負わないためにも、孤独死保険に加入しておくことをおすすめします。
高齢の入居者が多い場合
年齢が進むにつれて病気や死亡のリスクは必然的に高くなります。
60歳以上の高齢者のほとんどは何かしらの持病を抱えていたり、既往歴があり再発のリスクもあるでしょう。
「この前まで元気だったのに、急に倒れてそのまま亡くなってしまった」というようなケースは珍しくありません。
高齢者の多くはだんだんと自分ひとりでできることが少なくなっていき、中には認知症を患うケースもあります。
そのような状態になってしまうと、自分の身の回りのことをするのもままならなくなってしまい、周りに助けを呼ぶこともできなくなります。
その結果、孤独死という最悪の事態に陥ってしまうこともあるため、高齢の入居者が多い場合は前向きに孤独死保険を検討した方が良いでしょう。
単身の入居者が多い場合
孤独死をしてしまうのは高齢者だけではありません。
持病を持っている若年層や仕事や勉強のストレスから自殺を考えてしまう若者もいます。
単身の入居者の場合、自分ひとりで生活をしているため、病気で突然倒れてしまっても誰も気づいてくれません。
自力で救急車を呼んだり、近隣の住民に助けを呼ぶことができれば良いですが、心筋梗塞や脳卒中、くも膜下出血、原因不明の突然死といった急性疾患の場合、そういったこともままならないでしょう。
「若い人だから大丈夫」と安心している大家さんも多いと思いますが、年齢にかかわらずいつ何が起こるかわからないため、単身の入居者が多い場合は念のため孤独死保険に入っておくことをおすすめします。
リスクに備えたい場合
入居者の中に高齢者や単身者が少ないという場合、そういった場合でも不測の事態は起こるものです。
例えば、夫婦2人暮らしの家庭がある場合、夫が長期出張の間に妻が倒れてそのまま帰らぬ人となるようなケースもなきにしもあらずと言えるでしょう。
何が起こるかわからないからこそ、「万が一の時のためにリスクに備えておきたい」という気持ちがある大家さんは孤独死保険への加入を考えてみましょう。
入居者に火災保険とあわせて「入居者型孤独死保険」の特約を付けることは強制できないため、貸主側が準備をしておいた方が精神的に安心できるのではないでしょうか。
家主型孤独死保険の上手な選び方
家主型孤独死保険を扱っている保険会社は多く存在します。
しかし、実際加入するとなれば「どの会社で加入すれば良いのか」という点に疑問を感じるのではないでしょうか。
こちらでは下記のポイントに絞って上手な商品の選び方をご紹介します。
・加入条件を確認する
・補償内容を確認する
・家賃保証の内容を確認する
・補償金額の上限を確認する
家主型孤独死保険の加入に迷っている方は、ぜひこれらを踏まえてご自身に合った保険を選ぶようにしてくださいね。
加入条件を確認する
基本的に家主型孤独死保険は1室のみで加入することはできません。
つまり、「〇号室の〇さんは高齢だから家主型孤独死保険に入っておきたいな」というようなことができないということになります。
保険商品によって「最低〇室以上の加入が必要」と定められているところもあれば、賃貸物件の1棟丸ごと加入しなければならないというようなケースもあります。
さらには、保有している賃貸物件すべての加入が必要という条件が指定されているところもあるため、事前に加入条件をしっかりと確認しておきましょう。
補償内容を確認する
家主型孤独死保険は、「原状回復費用」「遺品整理費用」「家賃保証」の3つが補償内容となっているのが一般的です。
この3つの項目は家主型孤独死保険の大きな特徴であり、これらが含まれていない保険であれば加入する意味がないと言えるでしょう。
特に家賃保証に関しては大家さんや管理会社様にとって、もっとも重要な項目となるので、3つすべて揃っているかを必ず確認しましょう。
家賃保証の内容を確認する
入居者型孤独死保険にはなく、家主型孤独死保険にはある「家賃保証」は、大家さんにはまず必要と言える項目です。
補償内容の中に家賃に対する項目があるかを確認するのはもちろん、補償される期間や補償額の上限なども詳しく見ておく必要があるでしょう。
保険商品によって、空室になった時に補償してくれるのか、はたまた家賃引き下げとなった場合に補償してくれるのか、内容を正確に把握しておきましょう。
ちなみに保険商品によっては家主型と入居者型の両方に対応するタイプのものを選ぶと、家賃保証が対象となっていない場合もあるので、注意してください。
補償金額の上限を確認する
家主型孤独死保険では孤独死があった際に必要とされる原状回復や遺品整理に対する費用を補償してくれます。
この時に「上限いくらまで補償してくれるのか」という点で保険商品を決めると安心ですね。
一般的には50~100万円ほどの補償上限額が設定されている商品が多いですが、さらに手厚い保険もしくは50万以下の少額しか保証してくれない保険と、さまざまなタイプが存在します。
さらに、原状回復と遺品整理の2つを合体した金額について補償されるのか、それぞれ別で補償されるのかも、商品によって異なります。
生命保険や医療保険と同じように、補償上限額が大きければ大きいほど毎月かかる保険料は高くなるため、長期間加入することを考えると予算やニーズに合った保険を選ぶことが大切です。
大規模な賃貸物件を持っている大家さんの場合は、一棟すべてで孤独死保険に加入するとかなり高額な保険料がかかることになりますよね。
孤独死保険の知識を頭に入れたうえで納得できる商品を見つけることが負担を抑えるカギとなるります。
まとめ|2種類の孤独死保険の特徴を知ったうえで最適な商品を選ぼう
孤独死保険には家主型孤独死保険と入居者型孤独死保険の2種類があり、大家さんや管理会社が加入するのは前者になります。
孤独死はいつ起こるかわかりませんし、高齢者や単身者が多く入居している賃貸物件の場合はさらにリスクが高まるでしょう。
最近では若い年代の方が孤独死をしてしまうケースも見られるで、万が一に備えて孤独死保険に加入しておくことはとても大切です。 保険商品によって加入条件や補償の範囲、上限額が異なりますので、加入前に複数の保険を比較検討して納得できる商品を選ぶと安心ですね。
Sweepersでは保険対応の孤独死による特殊清掃やご遺品整理を承っております。
お困りごとがあればご連絡ください☺