親族の孤独死を発見したらどうする?
昨今、「孤独死」が社会問題化しつつあります。地域などのコミュニティによる「見回り」などで予防している例もありますが、今後、さらに高齢化が進めば孤独死の数が減るとは考えにくい現状もあります。
この記事をご覧になっている方も誰かの孤独死に直面するかもしれません。 そのときどんなことをするべきなのか、孤独死した遺体や住んでいた部屋はどうなるのか、気になることと思います。
本記事では、孤独死した遺体が発見された後の一般的な流れを解説します。
目次
孤独死した遺体を発見したら
この記事をご覧になっている方も、いつご自身が「孤独死の第一発見者」になってもおかしくありません。孤独死を発見してそのまま放置しておくことは、場合によっては罪に問われることで、許されない行為です。「孤独死を発見したら最初にするべきこと」は何でしょうか。
はっきりと「死んでいる」とわかる場合は警察に通報
孤独死を発見したということは、「人が死んでいる(かもしれない)場面に遭遇した」ということです。そんな場合にすべきことは、「警察に通報する」「救急車を呼ぶ」の二択しかありません。
とはいえ、具体的にどんなケースなら警察で、どんなケースなら救急車なのでしょうか。
もし「これは絶対に死んでいる!」とわかる場合は警察に通報したほうが良いでしょう。
救急車を呼ぶということは、まだ残っている命を救うための行動ですから、すでに命が失われているケースにおいてはあまり意味はありません。
孤独死の状況によっては事件性が疑われる可能性がありますので、警察に通報して現場検証してもらう必要があるのです。
「死んでいるかどうかわからない」場合は救急車を呼ぶ
一方で「この人はまだ生きているかもしれない!」という場合は、救命活動の一環としてまずは救急車を呼びましょう。
対象者の状態次第ではありますが、「死後、何週間も経過している」といった状況でなければ、素人には、生きているか死んでいるかを簡単に判断できないでしょう。
仮に対象者がすでに死んでいると思っても、もしかしたら生きているかもしれない、その可能性がゼロではないと判断したら救急車を呼んでください。
そんな特殊な状況で、冷静にベストな選択はなかなかできるものではありません。孤独死を発見したら「110番」か「119番」のどちらかに連絡し、必要に応じて相手の指示をよく聞いてその通りに行動してください。
遺体発見時の注意点
孤独死を発見したときに注意すべきなのは、「現場を触らない」ことです。
場合によっては事故や他殺などの事件性が疑われることもあります。その場合は警察が捜査を行う対象になってしまうこともあります。
もし、ご自身がその孤独死と何の関係もなかったとしても、現場の何かに触れたら関係者として怪しまれてしまう可能性があり、警察の捜査活動の邪魔をしてしまう可能性もあるのです。
よほどの事情があれば釈明の余地もあるかもしれませんが、基本的に孤独死の現場を発見したら現場に無暗に足を踏み入れず、速やかに警察または救急車を呼んで対応してもらいましょう。
プロの一言アドバイス
警察が捜査する場合、故人の関係者や建物の大家であっても室内に入ってはいけません。
基本的に「警察の指示に従う」ことを念頭に置いて、冷静に判断・対応してください。
孤独死した遺体の行方
賃貸物件の「大家さん」は、孤独死に関わりやすい職業であると言えるでしょう。
部屋を貸している方が孤独死してしまえば、大家として関りを持たざるを得ないからです。
そこで、孤独死の発見後、遺体に対してどのような関りを持つ必要があるのか、大きく2つのケースに分けて解説します。
遺族が引き取る場合
検死などの目的のために警察が遺体を引き取った後、必要な作業がすべて完了したら、判明した血縁関係の近い人から順番に、警察から連絡が来ます。
連絡を受けて遺体の引き取りを行う遺族は、警察から必要な情報を受け取り、捜査にあたって一時的に没収されていた物品を受け取ります。
遺族は遺体を引き取るまで葬儀を執り行うことはできません。しかし警察から遺体を引き取った後は速やかに葬儀を執り行う必要があります。
遺族が引き取らない・遺族が見つからない場合
遺族が存在しない、遺体の身元が分からないなどの理由により、遺体が引き取られない場合には、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」という法律に基づいて、地元の自治体が火葬を執り行います。
遺骨も引き取り人がいませんので「無縁塚」に埋葬されます。
もし後になって故人の法定相続人や扶養義務者が判明すると、自治体が負担した葬儀費用などがその人に請求されることもあります。
プロの一言アドバイス
遺体との関りでわからないことがあれば、公的機関に問い合わせましょう。
公的機関の指示通りに行動すれば、法的な問題を回避できますし、孤独死の遺族とのトラブルを避けられます。
孤独死の遺族になったら
遺族にとって、孤独死は寝耳の水です。
「まず何をしなければならないのか?」
「いつまでに何を済ませなければならないのか?」
こうしたことを知らないと、慌てて行動して失敗するかもしれません。
そこで、孤独死した方の遺族がするべきことを大まかにまとめてみました。
葬儀
孤独死の遺体の多くは変死扱いになり、警察により検死が行われます。
検死が完了し、問題がなければ「死体検案書」が発行され、これをもってはじめて「死亡届」の届出や葬儀の手続きを始めることができます。
なお、孤独死の遺体を引き取る際にかかった費用の一部(遺体の保管料など)は遺族に請求されます。
孤独死の遺体は状態が悪化しているケースも多く、葬儀費用の安さと霊柩車の手配費用などを考えると、現地でそのまま葬儀を進めた方が費用が抑えられるでしょう。
孤独死の遺体の身元が早めにわかれば、その分早く遺族に連絡が届きますので、検死完了までに葬儀社の手配、親族や関係者への葬儀の連絡等を済ませておくことをおすすめします。
遺品整理
葬儀などの必要最低限のことを取り急ぎ済ませたら、次に、そこまで急ぎではない諸手続きを進めましょう。
まずは「遺品整理」です。
孤独死したということは、多くの場合は遺品の状態が日常生活そのままの状態で残されているはずです。
特に孤独死した場所が借家の場合、部屋を退去するために故人の身の回りのものをすべて撤去しなければなりません。遺産相続の問題も出てきます。
また、孤独死の中には遺体発見が死後何か月も経過しているケースも珍しくありません。
いわゆる「死臭」や「腐敗臭」と呼ばれる異臭が部屋中に染み付いており、これは部屋の中にあった遺品にも染みついているでしょう。
死臭などの強烈な異臭は市販されている消臭用品では消臭しきれません。特殊清掃の専門業者が用意する専用の強力な消臭・脱臭機材でなければ臭いを取り去ることができないケースも多いのです。
各種手続き
孤独死した方は、生前にさまざまなサービスを利用していると思います。
継承する・しないに関わらず、契約者の死亡についてはサービスの提供会社に連絡し、解約等の必要な手続きを進める必要があります。
公的手続き関連だけでも、次のように膨大です。
- 健康保険や厚生年金保険の被保険者資格喪失届
- 雇用保険受給資格者証の返還
- 国民年金や厚生年金の受給停止届
- 国民健康保険や後期高齢者医療の資格喪失届
- 介護保険の資格喪失届
- 住民票の世帯主変更届
- 児童扶養手当認定請求
- 運転免許証の返却
- 相続財および産相続人の確定
- 遺言書の検認と遺産分割協議
- 相続税の申告
- 遺族の相続放棄
- 遺族年金の受給申請
- 所得税準確定申告および納税
- 不動産の名義変更登記
また、公共サービス関連では、次のようなものもあります。
- 公共サービス(電気、ガス、水道など)の停止届
- インターネットの利用停止届
- 電話サービスの継承または解約
- 運転免許証返納届
- 賃貸住宅の解約
- 子の氏変更許可申請(家庭裁判所)
- 高額医療費の請求
加えて、利用状況次第では民間サービス関連として、次のようなものもあります。
- 生命保険金の請求
- 相続が確定した預金、株式等の名義変更
- クレジットカードの解約
- その他、月額制などの継続契約の解約
人がひとり亡くなると、これだけの手続きが必要になります。中には故人の死後から期限が定められているものもありますので、早めに行動して期限内にすべての手続きを完了させておきましょう。
プロの一言アドバイス
故人が遺産を保有している場合、生前整理等ができていないので揉める可能性もあります。
必要に応じて弁護士に間に入ってもらうなどして、トラブルや遺恨を残すことなく相続問題を乗り切ってください。
少なからず人の死に関わる業者の中には、弁護士などの専門家とのつながりを持つところもあります。
孤独死が発見された部屋はどうすればいいのか
しかし、遺体や遺品を撤去した後の部屋に、そのまま別の人が住み始めることは簡単なことではありません。これも孤独死による問題の1つです。何よりも欠かせないのが、孤独死した方が住んでいた部屋の清掃です。
孤独死のあった部屋は「特殊清掃業者」が清掃する
一般的に、孤独死した方が住んでいた部屋の最終的な清掃作業は、「特殊清掃」を請け負う業者に依頼することになります。
特殊清掃とは?
特殊清掃とは、一般的な不用品回収業や片付け業とは異なり、主に「孤独死した後の部屋の掃除」のことです。
孤独死がおきてしまった部屋は遺体の発見が遅れたために、血液や体液が付着していたり、遺体が腐敗することによる異臭が発生していたりしており、一般的な清掃作業では除去できないものになっているため、大掛かりな作業や専門的な機材を使用しなければ原状回復が難しいのです。
特殊清掃を依頼するメリット
この特殊清掃作業そのものは特別な資格がなくても行うことができますが、専門業者に依頼するのが一般的です。業者に依頼することには以下のメリットがあります。
- 孤独死した後の部屋を手間なく片付けることができる
- 血液や体液、腐敗臭などの難しい除去作業も問題なく完了させられる
- 状態が悪化する前に片付けを完了させてくれる
- 不用品の分別の知識に長けている
特殊清掃を依頼する際の費用相場
特殊清掃を業者に依頼するとかかる費用は、いちがいに何円程度という相場がありません。なぜなら、清掃を行う部屋の状態、間取り、家財道具の量などの条件次第によって特殊清掃作業の難易度が大きく異なるからで、それらに応じて費用が決まります。
私たちSweepersの場合では、次のような料金表を目安にしています。
作業 | 料金 | 単位 |
---|---|---|
体液・血液の除去 | 40,000円〜 | 状態により変動 |
消臭消毒剤の散布 | 1,500円 | 1㎡ |
オゾン脱臭 | 50,000円 | 1日 |
特殊塗料の塗布 | 10,000円 | 1㎡ |
消臭シート | 5,000円 | 1枚 |
汚染畳の処分 | 5,000円(軽汚染) 10,000円(重汚染) | 1枚 |
汚染マットレスの処分 | 10,000円(軽汚染) 15,000円(重汚染) | 1枚 |
汚染布団の処分 | 5,000円 | 1枚 |
クロス剥がし | 35,000円 | 6畳程度まで |
これをご覧になっていただければ、作業内容が多くなるほどに費用が高額になる仕組みであることがご理解いただけると思います。
多くの業者でもこれに似た料金設定になっており、遺体の発見が遅れたり、清掃の対象となる部屋が広かったりすると高額な費用になってしまいます。
孤独死の部屋を一般人が片付けるのは大変
上記のような費用を惜しんで、自力で孤独死後の部屋を片付けようと考える方もいます。
しかし、私たちプロフェッショナルの目から言わせていただくと、決しておすすめできません。
時間がかかる
特殊清掃のノウハウのない一般の方が特殊清掃を行おうとしたら、莫大な時間がかかることは間違いありません。
私たち本職でも、現場の状況によっては数人がかりで数日かけて行います。
それを特殊清掃のノウハウがない方がやろうとしても、数倍の時間がかかることは明白です。
その間、異臭漂う現場で作業し続けなければならず、後述するデメリットがさらに大きくなるでしょう。
感染症や体調不良の原因になる
特殊清掃が必要な部屋の掃除には「感染症」のリスクがあります。
もし亡くなった方の死因が感染症によるものだった場合、または本人さえも知らなかった感染症を患っていた場合、遺体やその周辺には感染症の原因となるようなウイルスが蔓延しています。
さらに腐敗した遺体の周辺には害虫も多く、害虫自身や害虫が周辺の体液等から媒介した感染症をもたらす可能性もあります。
前述の通り、慣れていない方が作業しようとしても膨大な時間がかかるわけですから、感染症に罹患するリスクが高い環境に長く居続けることはさらにリスクが増すことになります。
中には、部屋の中には染みついた異臭だけで嘔吐や頭痛など体調を崩してしまう方もいるでしょう。
かえって費用がかかる
自力でなんとかしようと頑張ってみた挙句、結局どうしようもなくなって業者に依頼してくるケースも多いです。
しかし、そうした場合、最初から業者に依頼した場合よりも費用が高額になってしまう可能性があります。
例えば、体液などでできてしまったシミを何とか自力で拭き取ったとします。すると、異臭を発生させているシミの場所がわからなくなってしまいますので、消臭作業が難航することがあるのです。
このように、業者の作業を難航させる要因を作ってしまう可能性があるため、自力でチャレンジしてから業者に依頼するケースは、費用が高額化しやすくなります。
特殊清掃業者を探す方法
特殊清掃を依頼する業者を一から探すには、以下の方法がおすすめです。
特殊清掃を手掛ける対応エリア内の業者をピックアップ
清掃関連の業者すべてが特殊清掃を手掛けているわけではありませんので、業務内容として特殊清掃を請け負っている業者をピックアップする必要があります。
また、業者には「対応エリア」が決まっており、エリア外の建物の特殊清掃は基本的に請け負っていません。
インターネットで業者を探すのであれば「特殊清掃_業者_都道府県名」で検索すると良いでしょう。
見積もりを依頼する数社をピックアップする
最終的に依頼するのは基本的に1社だけですが、契約前に行う「見積もり」は、最低でも3社に依頼するのがおすすめです。これを「相見積もり」といいます。
3社以上で相見積もりを行うことで、その事例における相場が大体わかります。
都道府県で業者を絞ってもかなり多くの業者が検索にヒットしますので、以下の項目から総合的に比較して業者をピックアップし、見積もりを依頼してください。
- 業者の会社情報
- 片付け業の実績
- 過去の依頼時の作業内容がわかるもの
- 作業内容ごとの費用感
- 対応のスピード感
- 対応可能な時間、曜日
どれか1つの条件に絞って選定するよりも、複数項目を総合的に比較したほうが良い業者を探しやすいです。
見積もりの内容も比較対象に
見積もりを依頼する業者を決めたら、連絡して見積もりスケジュールを決めましょう。
見積もりをとるのは、おおよその相場を知るためですが、それ以外にも、業者を決めるのに役立つポイントが含まれています。
- 担当者の対応の良さ
- 見積もり金額が「安すぎない」および「高すぎない」
- 見積内容を質問したら丁寧に回答してくれるか
- その他、気になる対応や見積内容がないか
もしおかしな見積もりを出してきた業者があれば、「悪徳業者」の可能性が高いので注意しましょう。格安すぎるお見積りで作業完了時に追加請求といった事例も多く聞きますのでご注意ください。
プロの一言アドバイス
3社以上から相見積もりをとる理由は、真っ当な多数派と悪徳の少数派を明確に区別するためです。
例えば「A社:30万円」「B社:28万円」「C社:10万円」となれば、安すぎる見積額を出したC社が怪しいということになります。
孤独死が増えた原因
最後に、孤独死が増加して社会問題化している背景について解説します。
独居老人の孤立化
「平成30年版高齢社会白書」によると、2016年時点で約656万人の高齢者が一人暮らしをしています。これは日本の高齢者の5人に1人の割合ということです。
この中で、何らかのグループへの参加歴がある方は約6割。つまり4割の高齢者は家族以外との接点を持っていないことがわかっています。
コミュニティから孤立し、家族との接点も薄い独居老人には、日ごろの健康状態を気遣ってくれる人もおらず、亡くなったとしても誰も気づいてくれません。
そのため、孤独死し、異臭によって遺体を発見されるまで、誰の目にも触れることなく腐敗が進んでしまうのです。
パラサイトシングルの高齢化
「パラサイトシングル」もまた社会問題化して久しい状態です。
この人たちはいわゆる「引きこもり」で、周辺のコミュニティとのつながりはほとんどありません。
一時は若い世代だったこのパラサイトシングルたちが、今では高齢者の年齢になっているのです。
パラサイトシングルも、独居老人と同じで社会的なつながりが希薄なので、死後なかなか気づいてもらうことができません。
また、パラサイトシングルが高齢化しているということは、彼らを支えてきた親はさらに高齢ということになりますから、亡くなっている可能性も高いことになります。
完全に両親に生活基盤を依存していた場合だと、貯金を使い果たした後の生活基盤を確保できなくなり、食事が満足に摂れないことで亡くなるケースも多いという現状です。
妻と死別した男性の生活力の急激な低下
独居老人のうち、死亡リスクが高くなりやすいのは男性だとされています。なぜなら、独居している理由が「妻との死別」という人の場合、生活水準が大幅に低下してしまうからです。
多くの場合、女性が家事全般を担ってきた古典的な日本の生活スタイルを送ってきており、その女性が亡くなると、残された夫の生活の質は一気に低下してしまいます。
当然ながら食生活も衛生状態も悪化してしまいますので、健康を害して亡くなるリスクが高まるわけです。
プロの一言アドバイス
孤独死を回避するために重要なことは、「他人とのつながりを確保する」ことです。
コミュニティによっては独居老人の自宅を見回りするケースもありますが、孤独死を避けるためには、健康状態に気づいてくれる他人との接点を確保する必要があります。
【まとめ】身近な問題「孤独死」に向き合うことになったら特殊清掃業者を探そう
孤独死は決して他人事ではありません。今後、どなたにとっても、親族や誰かの孤独死に深く関わることになる日を迎える可能性が高くなります。
孤独死は遺体をはじめ、部屋の後片付けも大変です。特殊清掃を手掛けている信頼できる業者を探し、しっかりと原状回復してもらいましょう。
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