一見、足の踏み場もないほど散乱したゴミの山に見えるゴミ屋敷ですが、そこには住人の生活や思いが複雑に絡み合っています。
このコラムでは、特殊清掃員の視点から、ゴミ屋敷で多く見られる物について詳細に解説するとともに、さまざまな危険性と、その対策について考えていきたいと思います。
ゴミ屋敷は、決して他人事ではありません。誰もが陥る可能性のある問題であり、社会全体で取り組むべき課題です。
ゴミ屋敷の実態と真実を知り、問題解決への理解を深めていただければと思います。
ゴミ屋敷の衝撃的な現状
ゴミ屋敷の実態と深刻な現状
※環境省「令和4年度ゴミ屋敷に関する調査報告書」資料https://www.env.go.jp/content/000123210.pdf
令和5年度のゴミ屋敷件数は、まだ正式な統計は発表されていませんが、
環境省が発表している調査報告書によると、
平成30年度から令和4年度までの5年間で、全国の市区町村が認知したゴミ屋敷事案は5,224件
令和4年度単独では、1,064件
このことから、令和5年度のゴミ屋敷件数は、1,000件を超える可能性が高いと考えられます。
また、高齢化社会の進展と核家族化により、ゴミ屋敷問題は新たなリスクに直面しています。高齢者や独居者にとって、ゴミ屋敷の清掃は体力的な負担だけでなく、精神的な負担も大きくなります。孤立や認知症などの問題も相まって、解決が困難な状況に陥ってしまうケースも少なくありません。
ゴミ屋敷がもたらす健康被害と社会への影響
ゴミ屋敷は、害獣や害虫の繁殖によって、様々な健康被害を引き起こします。
- 呼吸器系の疾患:カビ、ダニなどの害虫によるアレルギーや喘息
- 感染症:ネズミなどの害獣による感染症
- 精神的な問題:ストレスや不安によるうつ病や統合失調症
これらの健康被害は、住人の生活の質を著しく低下させ、最悪の場合、命に関わることもあります。
また、ゴミ屋敷は、地域社会にも様々な悪影響を及ぼします。
- 火災リスク:ゴミ屋敷は火災発生のリスクが高く、周辺住民の安全も脅かされます。
- 害虫の繁殖:ゴミ屋敷は、ネズミやゴキブリなどの害虫の繁殖場となり、周辺地域にも被害が拡大する可能性があります。
- 景観の悪化:ゴミ屋敷は、地域全体の景観を悪化させ、住民の生活環境を悪化させます。
- 孤独化:ゴミ屋敷に住む人は、周囲との関わりを避け、孤立してしまう可能性があります。
ゴミ屋敷で実際に見られる物の多く
ゴミ屋敷の中で多く見られる物として、その居住者の生活習慣や年齢、職種によってさまざまですが、共通している物も多くあります。
これらの物は大きく分けて4つに分類されます。
1.生活ごみ
- コンビニ・スーパーの食品ゴミ
- 生理用品(女性の場合)
- 使用済みおむつ
- ペットボトル
- 段ボール
- 尿入りペットボトル
- 排泄物
まず、第一に生活ごみですが、事例的に多く見られるのが、スーパーやコンビニの弁当やお惣菜のパック、ペットボトルや紙パックなど、食べ残しから食べた後のゴミまで食品系ゴミが積みあがっているケースが多く見られます。
その他にも、使用済みの生理用品、使用済みおむつが床にそのまま投げ出されていたり、ゴミが積みあがっているため、トイレまでの経路が塞がれてしまい、近くにある容器に用を足したであろう物が見られることも少なくありません。
これら生活ごみは放置しておくと、いずれ腐敗し、漏れ出た汁が床を腐らせてしまう危険性や悪臭が発生し、近隣住民とのトラブルの種になってしまうケースが非常に多いといえます。
その中で生活している方にとっては、慣れてしまった臭いであっても、隣近所から見ればそれは耐え難いものであることには違いありません。
2.不用品
- 着なくなった衣類
- 壊れた家具
- 使わなくなった家電
- 処理が困難な物
- 古い書類
- 不用な書類
不要になった物を捨てられずに、そのまま放置した結果ゴミ屋敷になってしまったというのも、よくあるケースの一つです。
ここでの不用品とは、衣類の他、壊れた家具や使わなくなった家電製品など、どれも場所を取る物ばかりです。
実際にこのような不用品を捨てられない理由として、大部分を占めるのが、「捨て方が分からない」「居住者が高齢で処分事態が難しい」などが挙げられます。
これら不用品自体は、悪臭の原因になるケースは少ないですが、ネズミやゴキブリなどの害虫の住処になってしまうケースが多く、実際に、衣類や書類の収納スペースから多くのネズミが発見されたり、家電や家具の中から大量のゴキブリが出てきたケースが数多く見られます。
害虫及び害獣が発生し、繁殖してしまうとその家だけでなく、付近の家にまで影響を及ぼしかねません。
それがキッカケで、トラブルになってしまい、損害賠償を求められてしまったという事例もあります。
3.貴重品
- 現金
- 貴金属類
- ブランド物
- 不動産権利書
- 証券
ゴミの中から多くの貴重品が見つかるのもゴミ屋敷の特徴です。
一見、ゴミ屋敷という名前から、出てくる物のほとんどが、ただ処分するだけのゴミだとお思いの方もいるのではないでしょうか?
しかし、実際にゴミ屋敷から、数百万~数千万単位の現金が出てきたケースがあります。
これは、高齢の方に多い傾向ですが、銀行預金ではなく、現金貯金をもともとしていたが、その上に多くのゴミが積み重なったことによって、どこに現金があるか分からなくなってしまい、
結果、遺品整理時にそれらが見つかるといったケースも少なくありません。
また、現金だけでなく、金や銀といった貴金属類、ブランド物から土地の権利書など、さまざまな貴重品が出てくる場合があります。
これはまた別の話ですが、ゴミ屋敷の多くに未払いの公共料金の請求書、その他クレジットカード等の請求書が未払いの状態で見つかる場合があります。
そういったゴミ屋敷においても、大量の現金が見つかるケースがあります。
ここで「なぜお金があるのに払わないのか?」といった疑問が生まれますよね?
ゴミ屋敷の住人によく見られる特徴として、物事を何でも後回しにしてしまいがちな傾向が見られます。
そのため、そのような支払いをしなければいけないものに対しても後回しになってしまい、未払いの請求書が何通も届き、結果としてそれがゴミ屋敷を作り出してしまう原因の一つにもなっていると思われます。
4.その他
- 書籍
- アダルトグッズ(男性の場合)
- 思い出の品
- コレクション
- 未開封の通販
最後にその他として、趣味の物であったり、思い出の品(写真アルバム、学生時代の物)などが挙げられます。
これらの多くは、残しておきたいという気持ちの他、処分したくてもなかなか捨てられないといった場合が多いです。
親からの大事な形見であったり、深い思い入れがあるものなど、人によりさまざまですが、そのような大事な物でさえも、ゴミに埋もれてしまっている状態がほとんどです。
また、男性特有といってもよいと思いますが、アダルトグッズ(本、DVD)が大量に発見されるケースが非常に多くあります。
何を集めるかは個人の自由だと思いますが、いざ整理を業者に依頼するとなった際に、それらが他人に見られてしまうわけですから、あまり良い気にはならないはずです。
普段から整理を行っておけば、知られることもなかった物たちも、ゴミ屋敷にしてしまうことで、業者といえど、他人の前で公になってしまう場合があるため、私物を人に見られたくないと思っている方は注意が必要です。
ゴミ屋敷からの脱却「専門業者による清掃の重要性」
1.安全かつ衛生的な清掃:専門知識に基づく確かな技術
ゴミ屋敷は、悪臭、害虫、火災などの危険が潜む過酷な環境です。専門業者は、安全対策と衛生管理を徹底した上で、清掃作業を行います。
長年の経験と専門知識に基づいて、効率的に分別・清掃を行い、住人の健康と安全を最大限に配慮した作業を行います。
2.住民への配慮:清掃だけでなく心のケアを大切に
清掃の徹底はもちろんのこと、住民の心のケアも重要です。
当事者の気持ちに寄り添い、丁寧なコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことが重要です。
再発防止に向けたサポートも行い、住人が安心して生活できる環境を取り戻せるよう支援します。
3.費用対効果:専門業者による清掃のメリット
専門業者による清掃は費用がかかりますが、以下のようなメリットがあります。
- 安全かつ確実に清掃できる
- 再発防止に繋がる
- 時間と労力を節約できる
清掃の確実さ
ゴミ屋敷の清掃を素早く終わらせるには、それ相応の知識と経験(実績)が必要です。
その点、ゴミ屋敷の清掃を専門的に行っている業者であれば、効率的に作業を進めることが可能です。
また、ゴミ屋敷の清掃には、注意しなければならない部分もあり、
例えば、ゴミから漏れ出した汁などが床を腐らせて、床が抜けやすくなっている場合や、通常のゴミ収集所では集めていない、処理困難物が見つかるケースがあります。
その場合でも、安全かつ確実に処理することができるという点も大きなメリットの一つだと思われます。
再発防止に繋がる
一見、業者に依頼する際のデメリットにもなり得る部分である、「費用」の観点ですが、
逆に言えば、またゴミ屋敷にしてしまったらこれだけの費用が掛かってしまうという意識にも繋がります。
また、作業自体は再発防止に直接的に繋がるかといえば、難しいところですが、
一度、綺麗な状態に戻すことで、居住者の方の気持ちの切り替えのキッカケとなることもあります。
時間と労力を節約できる
ゴミ屋敷の清掃にかかる時間は、物量や間取りによっても異なりますが、
仕分け~梱包、搬出~処分までを考えれば、居住者の方が一人で行うのは容易ではないことが分かるでしょう。
また、高齢者がゴミ屋敷の清掃を行う場合には多くの危険が伴います。
そこで、業者を活用することによって、時間や労力を節約できるだけでなく、
安全面も考慮することができます。
ゴミ屋敷への対策
高齢者への支援:孤立を防ぎ、早期発見・早期対応
高齢化社会の進展と核家族化により、増加傾向にある高齢者・独居老人のゴミ屋敷問題。
行政による生活支援や地域住民による見守り活動を通じて、孤立を防ぎ、早期発見・早期対応が重要です。
予防策の普及:教育と啓発でゴミ屋敷を生まない
ゴミ屋敷の発生を予防するためには、大人だけでなく、幼い頃から整理整頓の習慣を身につける教育や、ゴミ屋敷問題に関する啓発活動が重要です。
また、定期的な清掃、整理を行い、ゴミ屋敷を生み出さないように予防していくことが必要です。
社会全体の意識改革:偏見と差別をなくし、助け合いの輪を広げる
ゴミ屋敷問題は、住人個人の問題ではなく、社会全体で取り組む課題です。
ゴミ屋敷に対する偏見や差別をなくし、住人が安心して助けを求められる環境を作る必要があります。
一人一人の意識改革と行動によって、誰もが安心して暮らせる環境を実現することが可能です。
~まとめ~
ゴミ屋敷問題は、単なる個人の問題ではありません。
高齢化社会、孤立、貧困など、社会的な課題と複雑に絡み合い、解決には多角的なアプローチが必要であるといえます。
行政による支援体制の充実、民間の専門業者による清掃サービス、そして個人の意識改革や予防策の普及。
これらの取り組みを社会全体で推進していくことが重要です。
同時に、ゴミ屋敷に苦しむ人々への理解と共感が不可欠です。批判や偏見ではなく、寄り添い、支える姿勢が必要です。
ゴミ屋敷問題は、決して解決できない問題ではありません。
一人一人の意識と行動、そして社会全体の力を合わせれば、必ず解決することができます。
誰もが安心して暮らせる社会を実現するために、一人一人ができることを考えて、実際に行っていくことが大切です。ご相談はお気軽にお電話ください。