引っ越したばかりの新居、長年住んでいる愛着のある自宅。
台風や大雨による浸水被害、水道管の破損による漏水など、さまざまな原因があります。
基本的に、床下には通気口があるため、次第に水が抜けて乾燥するだろうと放置しておく方も中にはいらっしゃいますが、実は多くの危険が潜んでいるのです。今回は床下に台風やゲリラ豪雨、洗浄呼応衰退による浸水が起きてしまった場合の対処について記事にしていきたいと思います。
目次
浸水が起きる大きな3つの原因
①台風などの水害
国土交通省によると、令和元年の水害被害額は、全国で約2兆1,800億円となり、
平成16年の被害額(約2兆200億円)を上回り、1年間の津波以外の水害被害額が統計開始以来最大を記録されたと報告されています。
このように、台風の大雨により川の氾濫や土石流、がけ崩れ、地すべりなどが発生し、人々の生活や生命が脅かされるような事案が度々発生しています。
これらは、人々だけでなく数多くの建物にも影響を及ぼします。
その中で一つ挙げられるのが、家の浸水被害です。
自然災害による浸水被害では、ゲリラ豪雨や台風による川の氾濫などによって大量の泥を含んだ水が建物内に流れ込むことになります。
時間が経てば、水が勝手に引いていくと思われがちなことですが台風による水害の場合、その多くが川や排水溝の粗い泥や砂、細かいゴミなどが水と共に流されてきてしまうため、それらが床下の通気口を塞いでしまい、床下にたまった水が抜けなくなってしまう可能性もあるのです。
また、床下浸水の定義では、浸水深が50cm以下であり、建物の床より下の部分まで浸水する状態とされています。
そのため、建物が建っている地盤高などが大きく影響し、隣り合う建物でも基礎の高さの違いによって、床下浸水する建物と被害を受けない建物のケースは異なります。
②水回りや配管設備の故障
水回りや水道管の破損には大きく分けて3つの原因があります。
- 気温の低下による凍結
- 経年劣化などの老朽化
- 地震などの自然災害
凍結
冬季に来る寒波の影響で水道管の破裂、損傷のケースは数多く確認されています。
この被害は、寒冷地でのみ起こる被害ではありません。
近年では、異常気象により、比較的温暖な地域でも最低気温が記録されるなどの事例が起こっています。
水道管の破裂は、気温「-4℃」以下の状態に起こりやすいといわれており、寒冷地に比べて、寒波の対策が一般的に行われていない地域でも、これらの被害が起きやすくなっているのが現状です。
老朽化
※厚生労働省資料参考https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/kousinkijyun_2.pdf
水道管などの管路には、「40年」の耐用年数が設けられています。
他にも、設置環境の差などによって多少の前後はありますが、基本的にはこの年数を上回ると、経年劣化により、「いつ破損してもおかしくない」と考えるべきでしょう。
目に見えて確認できる部分は、発見しやすいと思われますが、中には地中や壁の内部に埋まっている部分が破損している可能性もあります。
漏水しているかどうかを確認する一番手っ取り早い方法が、水道メーターを確認することです。
家中の水道を止めているのにも関わらず、水道メーターの「パイロット」が回っている場合は、漏水している可能性があります。
自然災害
自然災害の代表的な例でいうと「地震」です。
地震による大きな揺れによって水道管にヒビや亀裂が入り、そこから破損が広がってしまうケースも多くあります。
ここで注意したいのが、経年劣化による老朽化で設備の状態が万全でない場合、小さな揺れでも破損してしまう可能性があります。
そのため、定期的な点検や時期が来たら交換するなど、事前に予防策を張っておくことが大切です。
③物件建築時・リフォーム時の施工ミス
一見、事例がそこまで多くないと思われがちなケースですが、新築時の配管施工ミス実は意外と多いんです。弊社でも年間数件の施工を行っております。
今回は実際の事例をご紹介していきます。
事例1.新築のはずが、やけに停電する・・・
家族も増えて、念願のマイホームへ引っ越しを果たした矢先の出来事。
新居で生活している中で頻繁に停電が起こり、不思議に思ったご主人が点検口から覗いてみると、「水がひたひたに溜まっている状態」だったとのことです。
これは、床下で繋がっているはずの配管が抜けており、そこから水が漏れ出し、床下の設備が浸水したことで漏電が起きている状態です。
こちらは、床下に電気配線等の設備が設置されていたことにより早い段階で判明したケースですが、床下にそういった設備がない場合は、気付かずに長年経過してしまうケースもあります。
事例2.部屋の湿度が高く、何だかカビ臭い・・・
「この家で暮らし始めてから長年経つけど、何だか部屋がカビ臭いし、ジメジメしている。」
そう思われたご主人が点検口を覗くと、「すぐそばまで水が溜まっている状態」だったようです。
こちらのケースは、床下にあるはずの配管がそもそも設置されておらず、お風呂の水が全て床下に流れ込んでしまっている状態でした。
このケースは事例1とは異なり、床下に電気系統等の設備が設置されていないため、長年気付くことができず、カビの発生及び増加により悪臭が生じたこと、室内の湿度上昇など、二次的な被害によって判明することになりました。
これらのように施工ミスによる被害も多々報告されています。
悲しい現状ですが、それらについては自らが予防することはできず、施工者或いは、その関係者の責任になってしまいます。
床下浸水において考えられる危険性とは
木材の腐食
床下浸水によって湿気が溜まると、木材部分に「木材腐朽菌」が発生する可能性が非常に高いといわれています。
「木材腐朽菌」・・・木材に含まれる難分解性の物質(リグニン、セルロース、へミセルロース)を分解する能力を持つ。
簡単にいうと、木材を形成している物質が分解され朽ちてしまうということです。
床の土台や柱など重要な構造部の部分が腐食してしまうと建物自体に影響を及ぼします。
この菌は、湿度85%以上、含水率20%以上、温度20~30℃以上のいわゆる、「高温多湿」の環境で繁殖を行います。
つまり、床下浸水によって高温多湿状態になっている床下は、菌にとって絶好の繁殖場所となっているのです。
カビの繁殖による健康被害
床下の浸水を放置してしまうと、カビが発生し繁殖します。
カビによる健康被害の実害でいうと、アレルギーや気管支炎、喘息などを引き起こす可能性があります。
また、悪臭の発生にも繋がります。
たとえ、床下で繁殖したカビであってもあらゆる隙間を抜けて、室内にカビの臭いが充満してしまいます。
シロアリなどの害虫の発生
木材が腐食した場合、それを好んで餌とするシロアリが発生する可能性があります。
シロアリが及ぼす影響としては
- 床下の基礎部分(土台や柱)を食べてボロボロにしてしまう
- 鉛などの柔らかい金属をかじってボロボロにしてしまう
- レンガやコンクリートも食べてしまう
シロアリの恐るべきところは、「食害」による影響です。
シロアリの主な餌は木材ですが、時にはコンクリートや断熱材、金属までもがその捕食対象になってしまうのです。
また、床上にまでシロアリが侵入してきてしまった場合、ソファやベッドなどの家具を食い荒らしてしまう可能性があります。
シロアリは特定の繁殖期がないため、季節に関係なく卵を産み続けます。
つまり、1年を通して常に卵が繁殖している状態です。
それだけでなく、シロアリは何万個単位で繁殖していくため、早急な対処が必要となります。
漏電・火災の危険性
床下が浸水していて電気配線などが水に浸かってしまっている状態の場合、漏電してしまう可能性があります。
「この間、床下が浸水してから停電が多い」などの違和感を感じる方は漏電している可能性を危惧したほうがよいでしょう。
また、漏電以外にも火災の危険性もあります。
電気系統が浸水してしまうと、ショートしてしまいそこから火災に繋がるケースもあります。
床下が浸水してしまった時の対処法
排水作業を行う
床下が浸水してしまっている場合、まず初めに行うのが排水作業です。こちらは真っ先に行っていただきたい作業です!!
前文でもご紹介しましたが、水が溜まっている状態の場合さまざまなリスクがあります。
溜まっている水の量が少ない場合は、バケツやタオル、ペットシーツなどを用いて排水することが可能ですが、水の量が多い場合はホームセンターなどで市販されている排水ポンプを用いると良いでしょう。水につかっている状態は少しでも短いほうが後々の家屋ダメージが少なくなります。
泥の除去・洗浄作業
大雨などで川や排水溝から溢れ出た水が床下に溜まっている場合、同時に泥やゴミが溜まっている可能性があります。
前文でも述べましたが、泥やゴミは悪臭の原因になるだけでなく床下の通気口を塞ぐことによって、水が抜けず、乾燥させることができなくなってしまう場合があります。
また、カビの発生にも繋がってしまいます。
カビは、湿度(60~80%)温度(25~30℃)の高温多湿状態で発生し、餌となる皮脂やほこり(有機物)がある環境でみるみるうちに繁殖していきます。
その繁殖スピードは、条件さえそろってしまえば1週間も経たないうちに、目に見えるほどに広がってしまうのです。
そのため、カビの発生を未然に防ぐには、泥やゴミの除去をなるべく早いうちに行っておく必要があります。
また、除去が終わった後には真水で洗浄作業を行い、床下の環境を清潔にしておくことが大切です。
乾燥させる
洗浄作業が終わったら、床下をしっかりと乾燥させる必要があります。
木材が濡れた状態(湿度が高い状態)のままだと、腐朽やカビの発生の原因となってしまいます。
そのため、扇風機や送風機などを用いてしっかりと乾燥させることが重要です。
この時の注意点として、風力が弱すぎると乾燥までに長期間かかってしまったり、温風を用いた結果、床下の温度がカビの繁殖条件に一致してしまったり、急激な乾燥により木材が反ってしまったり、火災になってしまったというケースもあるので注意が必要です。
消毒作業
河川の水や排水溝の水、生活排水には多くの細菌が潜んでいます。
細菌は、感染症の原因となったり、悪臭の原因となったり、それらが及ぼす影響はさまざまです。
これを消毒作業を行うことによって未然に防ぐことができます。
消毒作業を個人で行う場合は、オスバン液(塩化ベンザルコニウム)などを用いるケースが一般的ではないでしょうか。
方法はオスバン液を0.1%濃度(10%製品の場合、本剤10ミリリットルに水を加え1リットルにする)に希釈し、じょうろなどで散布するというものです。薬局やドラックストアで購入できます。
一般細菌・真菌類への抗菌作用をもっているため、幅広い場面で用いることができるのが利点ですが、使用場面に合わせて十分に希釈しなければアレルギー反応が出る場合があるので注意が必要です。
私たちが作業に使用する薬剤は別のものになりますが、自力で購入がしやすいものであればオスバンで十分だと思います。
自力で対処する場合に準備するもの
自力で床下浸水に対して対処する場合これらの物を準備しておくと良いでしょう。
作業者が装着する物
長袖・長ズボン | 怪我予防・感染症予防 |
長靴 | 足元の保護 |
ゴム手袋 | 手元の怪我防止 |
マスク | 有害物質の吸い込み防止 |
ゴーグル | 目の保護 |
作業に必要な物
袋(土嚢袋・ビニール袋) | 泥やゴミをまとめる物 |
バケツ・スコップ・ちりとり | 泥やゴミをすくう |
排水ポンプ | 排水する物 |
ホース | 洗浄作業用 |
送風機 | 乾燥用 |
雑巾・スポンジ | 洗浄・排水用 |
自力で対処する場合の注意すべき点
床下に溜まったゴミによる怪我
河川などから流されてきた、ガラス片や建築時の廃材の金属の破片が床下に溜まっている場合があります。
作業中に、それらのゴミが皮膚に刺さってしまったり、肌を傷つけてしまうと、傷口から雑菌が入ってしまい感染症にかかってしまう可能性があります。
もし、万が一怪我をしてしまった場合は、すぐに清潔な水で洗い流し、アルコール等で消毒を行ったうえで、傷口を保護することが大切です。
菌や有害物質による感染症
床下で怪我をしてしまった場合以外にも、もともと皮膚に傷や炎症がある場合には注意が必要です。
床下作業で発症する可能性があるものには、命にかかわるものもあるのでしっかりと対策を行う必要があります。
起こり得る感染症
名称 | 潜伏期間 | 症状 | 重篤な場合 |
破傷風 | 1~2週間 | 筋肉の硬直 | 痙攣・呼吸困難 |
レジオネラ症 | 2~7日 | 頭痛・筋肉痛 | 高熱・肺炎 |
レプトスピラ症 | 1~3週間 | 発熱・筋肉痛・結膜充血 | 黄疸・出血 |
粉塵の危険性
乾いた泥の土埃などの粉塵が目や口に入ってしまうリスクもあります。
粉塵が目に入ったことによる結膜炎や吸い込んでしまったことによって気管支炎を発症してしまう可能性があります。
また、稀有な例ではありますが、粉塵が体内に入ってしまったことによって「レジオネラ症」に感染してしまったケースもあります。
自力での対処が困難な場合は専門業者に依頼する
床下浸水に対して対処を行うには、それなりの労力が必要になりますし、リスクもあるため、無理に自力で行うことはおすすめしません。
そういった場合に活用してほしいのが、水害復旧を専門的に行っている業者です。
業者に依頼することで得られるメリットとしては、
- 短期間で作業を完了させることができる
- 洗浄・消毒・防カビ施工・防蟻施工・乾燥・脱臭など幅広く対応することができる
- 準備物・労力を考慮しなくてもよい
中には、業者に依頼する費用を削減したいという意見の方もいらっしゃるとは思いますが、業者に依頼することで得られるメリットは多くあります。
作業期間の短縮
床下作業は基本的の匍匐前進で行います。かなり体力を使う作業となります。
一方で業者は、さまざまなパターンの水害現場を経験しており、その状況に合わせた最適な作業工程を的確に見極めることができます。
また、作業をいかに効率的にすすめるかも重視されるため、最短で1日で作業を完了させることができます。床下の作業は私たちでも大変な作業です。大変さがないというだけで依頼するメリットがあるのではないでしょうか。
対応できる幅の広さ
洗浄の後に消毒作業を行うというお話をさせていただきましたが、床下における対処はそれだけではありません。
もし、カビが発生してしまっている場合は除去作業を、悪臭が発生してしまっている場合は消臭作業が必要になってきます。
自力で行う場合、消毒作業は何とかなるかもしませんが、カビの除去や消臭ともなると一筋縄ではいきません。
また、間違った対処をしてしまった場合、せっかくそれらに必要な物を買い揃えたのに無駄になってしまったということにもなりかねません。
その点、業者であれば消毒からカビの除去・防止まで一括で依頼することができます。
感染症のリスク・労力を考慮する必要がない
前文で怪我や感染症のリスクについてお話しさせていただきましたが、専門業者に依頼してしまえばそういった点を考慮する必要もありません。
また、床下はその建造物によって異なりますが、地上から約50cm程度が平均とされています。
その狭いスペースで作業を行うわけですから、もちろん体を起き上げることはできませんし、基本的にほふく前進をしながら進めることになります。
体制的にもなかなかきつく、慣れてない方であれば休み休みしながらの作業になってしまい、作業自体も容易なことではありません。
まとめ
床下浸水における多くの危険性と対処法についてご理解いただけたでしょうか。
確かに床下作業を自力で行うことも可能ですが、それにはいくつかのリスクが存在し、作業自体も容易なことではありません。
建物を長持ちさせるだけでなく、暮らしやすい家を作るためには定期的なメンテナンスも必要ですが、もし万が一、水害被害に遭ってしまった時のためにも事前に正しい対処法と危険性について知っておくのも重要なことです。
また、台風や大雨の危険性が低い地域でも、設備の経年劣化や異常気象による予期せぬトラブルにみまわれる可能性があることも十分に考慮しておくことが必要です。
もし、水害被害に遭ってしまい自力での対処が難しいと感じたら、作業を安心して任せられる専門業者に相談してみてはいかがでしょうか。
私たちSweepersは床下の消毒作業についてセミナー講師をするなど第一線で活躍しているスタッフが多数在籍しております。床下の消毒に関しては何でもご相談ください。
水害復旧の施工料金はいち早く対応できるよう全国一律料金で住宅の図面があればお見積り可能です。