誰にも看取られずに亡くなってしまう「孤独死」は、昨今希有なものではなくなっています。
孤独死が発見されたらどのように処理されるか、その流れを知っておくと、いざというときに的確な行動をとることができます。
本記事では、孤独死の処理の流れについて解説します。
目次
なぜ孤独死は起こってしまうのか?
かつては孤独死が発見されると大きなニュースになりましたが、今ではそれほど珍しくないことではなくなっています。孤独死の増加は社会問題のひとつです。
なぜ孤独死が起こるのか、増加しているのかということから解説しましょう。
社会からの孤立
近年では、SNSの普及や個人情報に対する意識の高まりによって、昔のような「近所付き合い」はあまり行われないようになりました。
それが顕著に表れているのが、「自治会の加入率の低下」です。たとえば東京都町田市の売、2005年に60%だった加入率が2021年には49%まで減少しています。そしてこれは全国的な傾向なのです。
近所の人とあまり顔を合わせないということは、家族がおらず、会社や学校などに通っていたりしなければ、他人と会話をする機会自体がなくなりがちです。
親やきょうだい、親戚との関係も疎遠だと「万が一のときに頼れる人がいない」ということになってしまいます。
いわゆる社会的に孤立しているという状態になります。
そのような場合、自宅で体調を崩したり怪我をしてしまったりしても、それを誰にも気づいてもらえずに孤独死に至ってしまうことがあります。
特に未婚だったりパートナーに先立たれりした高齢者は、孤独死の大きなリスクに瀕しています。
持病による病死
孤独死の背景には上で述べたような「社会からの孤立」が増えていることがありますが、直接的な死因の多くは、「持病が悪化したことによる病死」です。
特に高齢者にとって疾患はリスクが高く、すでに数種類の持病を抱えている高齢者も珍しくないでしょう。
病院で看取られる場合は孤独死にはなりませんが、独居老人の中には年金と貯金を切り崩して生活している人も多く、経済的な困窮状態のために病院に入ることができない人もいます。
手持ちのお金を生活費以外のことに充てられず、持病が悪化しても通院するような余裕をもてないのです。
その結果、自宅で動けなくなってしまうまで病気が悪化してしまい、そのまま孤独死を迎えるというケースが多くみられます。
自殺
孤独死の直接的な死因で多いのは、上記の「病死」だけでなく「自殺」です。
国の孤独死対策委員会は、孤独死の特徴的な傾向として「孤独死の死因をみると自殺の占める割合が10%超と一般より高い」と指摘しています。
上記したように独居老人の多くは地域コミュニケーションから孤立し、親族とも疎遠になっていることが珍しくありません。
老人に限らず、また社会や親族から孤立して生活している人は、経済的な理由や精神的な理由などから自ら死を選んでしまうケースも多いのです。
一人暮らしで社会から孤立している人が自宅で自殺すると、どうしても発見されるのが遅くなります。 こうした背景によって孤独死が増えているのです。
プロの一言アドバイス
孤独死する人の平均年齢は約60歳だと言われます。
60~69歳が多くなっていますが、全体的には60歳未満のの割合が4割前後を占め、女性や若年者の孤独死も少なくありませんので、高齢者が多いとは言い切れません。
孤独死発見からの流れ
孤独死が発見されると、まずは警察による検分が実施され、その後、親族に連絡が来ます。
以下、孤独死した人の遺族の立場から、処理の流れについて解説していきます。
警察からの連絡
警察は孤独死の現場に到着した後、検死課による現場検証を行います。
家宅捜索の結果、金品などは一時的に没収されます。
警察の作業中は、住宅管理の関係者などの部外者は原則として現場に立ち入れません。
身元が判明したら、死体検案書と遺体が遺族に引き渡される流れになります。
そのために警察は、公的書類や契約書などから遺族関係を調べ、故人の親子や兄弟、親戚など血縁関係の近い順に連絡をしていきます。
遺品等からすぐに身元が分からない場合はDNA鑑定なども行います。
なお、警察が行ったことに対して次の支払いが必要になります。
- 搬送料: 孤独死現場から警察署までの搬送や、警察署から解剖場所までの搬送など、遺体の搬送を葬儀社が行った場合、遺族の負担となります。警察が搬送した場合でも、遺体引き取り後の葬儀場・火葬場までの搬送には搬送料がかかります。
- 検死費用: 検視を行った医師の費用です。病院や地域によって費用額はさまざまですが、相場は5万円ほどです。
- 解剖費用: 警察が解剖が必要と判断した場合は司法解剖となり、これは国が費用負担します。それ以外の行政解剖や承諾解剖は8~12万円の相場です。
- 遺体保管料: 警察署では遺体は専用の保管庫で保管されます。保管料は1泊2,000円程度です。死因や身元が特定されないと遺体は引き渡されないため、検死の状況によっても保管日数が変わります。
- 死体検案書発行料: 役所や火葬、相続手続きには死体検案書が必須です。5千円~1万円ほどの発行費用を遺族が負担しなければなりません。
死亡届の提出
死亡診断書や死体検案書を受け取ったら、遺族はそれを役所へ持参し、「死亡届」を提出することになります。
遺族としては連絡を受けた時点で大きなショックを受けていることと思いますが、死亡届は基本的に「死亡後7日以内」に提出しなければなりませんので、迅速に行動して期間内に死亡届を提出しましょう。
孤独死では死後数日以上も経過してから発見されることも多いので、死亡診断書を書いてくれる医師を探すのに時間がかかっているケースもあります。
そうした場合には、なおのこと急いで死亡届を提出する必要があります。
葬儀の段取り決め
必要な手続きが済んだら、「葬儀」の段取りを決めます。
孤独死では「誰が喪主になるのか?」ということなどでトラブルになることもよくあります。
喪主を決め、葬儀を行うことは、形式上、一般的な葬儀と異なることはありませんが「孤独死」ということで喪主になることを嫌がったり、そもそも遺族が引き受けることを拒否することも多いのです。
なるべくスピーディに行動して、スムーズに葬儀の段取りを決めていきましょう。
葬儀・火葬の執り行い
段取りに従って故人の葬儀・火葬を執り行います。
遺体を引き取る遺族がいない場合は「行旅病人及行旅死亡人取扱法」という法律によって地元の自治体が火葬を執り行うことになっています。
自治体が負担した費用は後から法定相続人や扶養義務者などに請求されます。
引き取り手がいない遺骨は、その後一定の保管期間を経て「無縁塚」へと埋葬されることになります。
特殊清掃業者の選定と依頼
孤独死した場所が「賃貸住宅」の場合は、その後も賃貸を継続するために「特殊清掃」が必要になります。
特殊清掃とは、通常の清掃で汚れを処理するのが難しい現場を掃除することです。
孤独死は発見された時点で遺体の腐敗が進んでいるケースが多く、遺体がなくなっても、遺品を処理するだけでは原状回復できません。
特殊清掃のプロの手によって、孤独死の現場の痕跡をすべてなくすことが必要なのです。
賃貸住宅のオーナーも、特殊清掃を実施しなければ賃貸借契約を解除してくれないケースもありますので、警察の検分が完了し次第、特殊清掃業者に作業してもらえるように進めることをおすすめします。
よく業者に仕事を依頼する際に複数の業者から相見積もりをとることがありますが、孤独死の特殊清掃の場合は、時間が経つと腐敗等の影響が大きくなってしまうため、一刻も早く作業を開始しなければなりませんので、のんびり相見積もりをとって業者選定しているひまはないでしょう。
時間が経過するほど特殊清掃の費用が高くなってしまいますので、業者を剪定するとしても、電話相談して2社ほどに絞って選ぶのがいいでしょう。
特殊清掃業者の選び方については、のちほど詳しく説明します。
特殊清掃の実施
特殊清掃を依頼する業者が決まったら、打ち合わせした日時で特殊清掃が実施されます。
特殊清掃の業者は専門装備を備え、特殊な薬剤などを使って消臭・消毒・清掃作業をしていきます。
業者に依頼しなくても自分たちで清掃を実施できないのだろうか、と思う人もいるかもしれませんが、細菌感染の可能性もあるので消臭だけでなく消毒作業も行う必要があるため、素人が自分たちだけで清掃を行うことは難しいでしょう。
賃貸借契約の清算
「賃貸住宅」の場合は、賃貸借契約の清算を行います。
もし家賃の滞納などがある場合は相続人に法的支払い義務があります。ただし保証会社や連帯保証人がいる場合には支払ってもらえる可能性がありますので、契約を確認する必要があります。
特殊清掃業者の原状回復が完了したら、物件を明け渡します。
賃貸住宅のオーナーがフルリフォームを求めることもありますが、これについて相続人が負担する必要は基本的にありません。
そういう場合や、他にも何らかのトラブルが発生した場合は、弁護士などの専門家の助力が必要になることもあるでしょう。
遺品の整理
孤独死の現場には、家具や衣類など亡くなった方の遺品が残っています。
これらは原則として「遺品」として相続人が受け取る必要があります。とくに賃貸住宅ではすべて引き取らなければならないので、遺品整理・処分という作業を行わなければなりません。
特殊清掃業者には、この作業を依頼することもできます。
孤独死の現場に残された遺品は、いわゆる「死臭」が染みついており、処分せざるを得ないものも多数あります。特殊清掃の業者ならそうした処分についても適切に行ってくれます。
遺族は問題のない遺品だけを引き取り、相続人間でその後の処理を話し合えばいいだけです。
相続の検討
特殊清掃と賃貸物件の引き渡し等が済んだら、次は「相続」について検討していきます。
亡くなった方には借金や滞納家賃、滞納税などの負債があるかもしれません。そうした場合には「相続放棄」をされる方も多いようです。
相続放棄は、資産の相続もできなくなりますが、ほとんどの負債についても相続しないことを選択できます。
預貯金や動産などの遺産を少しでも受け取ったり処分したりすると、相続の意志があったということになり、相続放棄をできなくなりますので、注意が必要です。
相続放棄を選択できるのは、死後3ヶ月までという期限がありますので、あまりじっくり検討する時間はありません。
相続に関する問題やトラブルが起こった場合には弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
死亡後の各種手続きの実行
以上のほかにも、人が死亡したことによってさまざまな手続きが必要になります。
- 年金受給停止
- 介護保険資格喪失届
- 住民票の世帯主変更届
- 雇用保険受給資格者証の返還
- 国民年金の死亡一時金請求
- 埋葬料請求
- 葬祭費、埋葬料請求
- 高額医療費の還付申請
- 遺族年金の請求
- 所得税準確定申告・納税
- 相続税の申告・納税
- 不動産の名義変更
- 預貯金払い戻し、名義変更
- 株式の名義変更
- 自動車の売却、名義変更、処分(廃車)
- クレジットカードの利用停止
- 運転免許証の返納
- パスポート失効
- 生命保険金の受取り
- 公共料金の名義変更
こうした中には、放置すると余計なトラブルに発展してしまうものもあります。手続きに漏れがないように迅速に行動することが必要です。
プロの一言アドバイス
本項で述べたように、遺族にとってはやることが山積みです。
一部の手続きについては専門家に代行してもらうこともできるので、自分たちでは難しいと判断した場合は助力を得ることも視野に入れましょう。
所有する物件で孤独死が発生した際の流れ
前項では、孤独死の遺族の立場での処理の流れについて説明しましたが、本項では、自分の賃貸物件で孤独死が起こった際に、その物件のオーナーがやるべきことについて解説します。
住人や関係者に連絡をとる
この時点ではまだ住人が孤独死したことは判明していません。
しかし、周辺から「悪臭がする」などの連絡を受けて、そのリスクがあると判断したら、まず電話等で住人本人に連絡してみましょう。
ただし勝手に解錠して部屋に踏み込むべきではありません。
住人と連絡ができない場合は、住人の親族や関係者などに連絡し、安否を確認してもらってください。
「数日前から出勤していない」「何日も連絡がとれていない」という状況になったら、いよいよ孤独死やその他の事件性が強く疑われると判断できますので、次の段階に進みます。
合鍵等で部屋を解錠して室内に踏み込んだりするのは、単独では避けたほうがいいでしょう。
警察に連絡する
住人と連絡がつかず、孤独死が強く疑われる場合には警察に通報します。
状況について知っていることをできるだけ細かく警察官に伝え、現場に来てもらいます。
警察と一緒に室内を確認する
警察が現場に到着したら、合鍵等を使ってドアを開け、警察官と一緒に内部の状況を確認しましょう。
住人の死亡が確認されると、警察は現場検証などを行います。警察官の指示に従って行動してください。
必要に応じて親族や関係者に連絡し、その後の処理について相談を進めましょう。
親族等と連絡がつかない場合は「保証人」に連絡してください。
プロの一言アドバイス
孤独死の現場では、冷静さを失わず、慌てて行動しないようにしましょう。
慌ててしまうと適切な行動がとれなくなってしまいます。
緊急事態ではありますが、なるべく落ち着いてから行動することを心がけてください。
特殊清掃業者の選び方
最後に、どのような特殊清掃に孤独死の処理を依頼するべきなのかについて解説します。
「完全消臭」などの実績がある
特殊清掃は、「完全消臭」などの実績をなるべく多く有している業者を選びましょう。
特殊清掃でよくトラブルになるのは、作業を行ったのに臭いが残っていたり、虫がわいてきたというような事態です。
なぜそのようなことが起こるかというと、特殊清掃の経験が少なく、実力が伴っていない業者が施工したから、ということが多いようです。そうした業者が施工すると、表面上はきれいな部屋になっていても、死臭や腐乱臭などが残ってしまっていることがあるのです。
そうした状態では原状回復したことにならないため、賃貸の場合、オーナーともめることになるでしょう。
このため、完全消臭などの実績が豊富な業者に依頼することが重要になります。
実績については業者のホームページで確認できることが多いです。
見積もりが適切である
また、適切な見積もりを出す特殊清掃業者を選ぶようにしましょう。
優良な特殊清掃業者は、現場をきちんと診断し、きちんとした料金プランにもとづき、作業項目ごとの金額が明確な見積もりを出してくれるはずです。
悪質な特殊清掃業者は見積もりもいい加減なことが多く、どのような作業内容を実施するかを明確にしていなかったりします。質問をしてもはぐらかされてしまうこともあるようです。それでは何の作業にいくら費用がかかるのかわからず、高いのか安いのか判断できません。
優良な業者であれば、作業項目ごとにそれぞれ費用を明確にした見積書を出してくれますし、わからないことがあれば質問すればきちんと回答してくれるはずです。
質問したときに業者がどのように回答するか、その対応品質も、優良業者と悪徳業者を見分けるためのポイントになります。優良業者であれば従業員教育も行き届いているため、担当者も丁寧に対応してくれることが多いでしょう。
また、たとえ見積もり金額が安くても、後からオプションなどの名目で高額な追加料金を請求してくることがあります。
そのような業者は施工技術も低く、そのような高額料金に見合った仕事をしてくれません。
このため、特殊清掃業者は、必ずきちんとした適正な見積書を出すところに依頼してください。
特殊清掃の適正な料金がいくらぐらいかということは、現場や状況によって作業内容や作業量が異なるので、一概にはいえません。ただ、安ければ10万円程度、作業量が多い場合は100万円以上かかるケースもあります。
重要な資格をきちんと保有している
重要な資格をきちんと保有している特殊清掃業者に依頼しましょう。
特殊清掃に必要な資格にはさまざまなものがあります。
中でも重要なのは次の2つです。
一般廃棄物収集運搬業許可
簡単に言えば家庭のごみの多くを扱う資格です。
この資格を持っていると役所の下請け作業を行うことができるのですが、じつはこの資格を取得するのはとてもハードルが高く、新規の業者が取得することはほぼ不可能とさえ言われています。
似たような資格に「産業廃棄物収集運搬」というものがありますが、これは特殊清掃とは無関係な資格ですので、注意しましょう。
解体業許可
特殊清掃と解体業がなぜ関係あるのかと思うかもしれませんね。
じつは特殊清掃の重要なポイントである「完全消臭」には、この資格が関係しているのです。
なぜなら、たとえば床を消臭するためには床を解体することが必要になる場面があるからです。これを行うには、解体業許可が必須です。
解体業許可を得ていない業者は解体作業を行えないので、そのような場合には完全消臭ができないことになります。
優良な特殊清掃業者に依頼したいのなら、解体業許可を有しており、完全消臭の経験が豊富な業者を探したほうがいいでしょう。
プロの一言アドバイス
特殊清掃に関係のある資格としては、ほかにも「脱臭マイスター」や「古物商許可」といったものがありますが、必ずしも必要な資格というわけではありません。
悪徳業者の中には、関係のない資格ばかりずらっと並べて優良業者のように見せかけているところもありますので、注意が必要です。
【まとめ】孤独死の現場は処理が大変!実勢ある業者に特殊清掃を依頼しよう
孤独死が発生した後に、亡くなった人が住んでいた場所を適切に処理して、原状を回復することは大変重要ですが、専門的な領域の作業になりますので、素人が行うことはなかなか難しいでしょう。
技術をちゃんともっていて、料金も適切な特殊清掃業者を探して、すみやかに賃貸物件の引き渡しを行いましょう。
特殊清掃や家財整理などのご要望がありましたら、茨城県内から関東を中心に47都道府県全国対応のSweepersまでご相談くださいませ!